狼と7匹目の子ウサギ













 「キア・・・・・俺の家に来るか?」
 しばらくして、コードはキアにそう言った。
 「コードさんのお家?」
キアは涙を拭い、高い位置にあるコードの顔を見上げる。
 「お前も初めては外は嫌だろう?」
 「・・・・・」
(どうなんだろ・・・・・)
確かに、兄弟達もレンも、交尾は家の中でしていた。
ベットの上で、着ている物も全て脱いで、汗や精液に塗れて絡まっていた。
(やっぱり・・・・・しなきゃいけないかな)
交尾自体、キアにとってはそんなに重要なことではない。誰に対して初めてだとか、何人と交尾したか、キアにとって大切なのは
そんな事ではなく、レンと交尾しないこと・・・・・ただそれだけが大事だっだ。
一度身体を合わせたら、二度と近付くことも許してくれない。
大好きなレンと話せなくなってしまうのは怖いのだ。
(レンが今あんなに優しいのは、僕と交尾をしていないせいだからだろうし・・・・・)
 「キア?」
 「気を遣わないでいいよ、コードさん」
 「気を遣ってるわけじゃないんだがな」
 「交尾は外でしたっておかしくないんだし。ただ・・・・・この森では嫌だな」
(レンさんと一緒にいる時、変な気持ちになったら嫌だし・・・・・)
何より自分の日常にあるこの森の中に、生々しい行為の余韻を残したくは無かった。
 「コードさんのお家、遠い?」
 「一山越える事になるが」
 「・・・・・ちょっと遠いね。じゃあ・・・・・丘の向こうに行く?綺麗な花がたくさん咲いてる草原があるんだ」
キアの言葉に、コードはじっとその目を見つめた後・・・・・小さな手をそっと握った。



 レンは怒りに任せて自分の小屋に歩いていた。
馬鹿なキアが憎らしくて、そのキアを横取りしようとするコードが憎らしくて、自分の頭の中がグチャグチャな感じがしてしまう。
(あの馬鹿っ、何が簡単なことだ・・・・・っ)

 「だって、簡単なことだもん」

 不思議そうに自分を見上げながら言うキアには、交尾の意味がどんなものかよく分かっていないのだろう。
雄と雌ならはれっきとした子孫繁栄の意味があるが、雄同士のそれは快楽という意味合いがほとんどだ。どちらも経験を積めば
かなり気持ち良くなるということはレン自身身をもって知っているが、そんな快楽をキアに知ってもらいたくなかった。
・・・・・いや。
(俺以外に教えられるなんて・・・・・!)
 「・・・・・っ」
 レンは足を止めた。
 「・・・・・いいのか・・・・・?」
このまま、キアがコードのものになっていいのか。
 「・・・・・」
あの丸く大きな瞳に映るのが自分以外でもいいのか。

 「レンさん」

何時も何時も、嬉しそうに、恥ずかしそうに、レンの小屋を訪ねてきたキア。
何でもないことを楽しそうに聞いて、レンへの好意を隠そうともしなかったキア。
多分、兄弟から聞いたのだろう一度交尾をしたものとは二度と会わないという言葉を信じ、どんなに潤んだ目をしていてもレンを
誘ってこなかったキア。
 「・・・・・っ!」
匂うようなキアの発情を、どうして今まで我慢出来たのか・・・・・。
 「!」
全ての答えはまだレンの中に残ったままなのだ。



 まだ陽は落ちていない。
キアはコードの手を引っ張るようにして森の反対側にある丘までやってきた。
 「へえ・・・・・こんな所があるのか」
 「綺麗でしょ?」
小さな泉と綺麗な花々。それを囲うように木々も茂っているこの場所は、本当に秘密の部屋といってもいいだろう。
 「兄さん達に教えてもらったんだ、ここで交尾すると気持ちいいって」
 「・・・・・」
 キアのその言葉にコードは複雑そうな顔をした。
 「・・・・・分かってないんだろうな」
 「え?」
 「キア、交尾の意味、分かってるのか?」
 「ちゃんと知ってるよ?兄さん達のも見たことがあるし、レンさんのだって・・・・・」
その名前を言った途端、キアは自分の胸がチクンと痛んだような気がした。
(そうだよ、レンさんだってしてることだもん・・・・・)
実を言えば、兄弟が相手にしていた者に、最中に一緒に混ざらないかと誘われたことは何度もあった。皆キアがまだ交尾をした
ことが無いのを知っていて、初めては自分が相手をしてやると熱心に誘ってきたものだ。
その時は兄弟が笑いながら拒絶してくれたし、キア自身したいとも思わなかったのだが、レンが交尾をしているのを見た時、その
相手が自分だったらと身体が熱くなってしまったのは・・・・・レンには言えない。
ただ、きっと交尾というのはこんな風に身体も心も熱くなるんだろうなと、夢を見るように想像は出来た。
(多分・・・・・コードさんとなら大丈夫だよね)
自分を欲しいと言ってくれた優しい虎族の男は、きっとキアが想像しているような初めてを経験させてくれるだろう。



 こんな泣きそうな顔をしているのに相手など出来るのだろうか・・・・・コードはそう思いながらキアを見下ろす。
一度は経験した方がいいと言われる兎族との交尾。この町の淫乱な兎族なら適任と噂を聞いてやってきたものの、コードが実
際に出会ったのはまだ初めてもしたことが無いような子供だった。
しかし、その身体から匂う美味しそうな香りは、コードの躊躇いを蹴散らしてしまった。
 「あ、身体洗わなくちゃ」
 「キア?」
 「最初は身体を綺麗にするんでしょ?」
 「まあ、そうした方がいいのかもしれないが」
(そのままの方がいいと言ったら困るだろうしな)
 どうやら兄弟にやり方だけは教えてもらっているのか、キアの言動は慣れた者のようだ。
しかし、その心まではまだついてきていないのか、口で言っている以上に目ではそれでいいのかと確認してくるのでコードは頷いて
やる。
すると、キアはホッとしたように笑って、そのままパッパと服を全て脱ぎ捨て、そのまま泉の中に入っていった。
 「外での水浴びはやっぱり気持ちい〜」
 「・・・・・」
(真っ白だな)
 それまでの服から出ていた顔や手足が白いのは分かっていたが、こうして全裸になると透き通るように白い肌だというのはさらに
良く分かった。
腰付きはまだ薄く、尻も片手で掴めそうなほどに小さいが十分そそるし、フワフワの丸い尾っぽや耳も、思わず撫でて噛んでしま
いたいぐらいに誘うように揺れている。
こちらを振り向くと肌より少し色づいただけの乳首と、そのもっと下の、確かに雄であるという証のペニスはまだ子供のような形と色
だ。
 「・・・・・」
(喰ってもいいのか・・・・・?)
 まだ何も知らない子供を騙すようにこの手にしていいのかと躊躇いもしたが・・・・・。
 「ねえ、コードさん」
 「あ、ああ、何だ?」
 「本当に気持ちよくしてくれる?」
 「・・・・・っ」
(反則だろうが・・・・・)
あどけなく首を傾げてそう聞かれ、否と言える者など居るはずがないだろう。
 「安心しろ。お前の想像以上に気持ちよくしてやる」
そう言ったコードは、おもむろに自分も服を脱ぎ捨て、既に半勃ちになっているペニスを堂々とキアに見せ付けた。