狼と7匹目の子ウサギ













 キアの面前に、コードのそそり立ったペニスが現われた。
(・・・・・さっきよりも、おっきい?)
少し間、自分が手で触れた時よりも大きくなっているような気がして、キアの目にはそれが全く別の生き物のようにも見えてきた。
 「これを今からお前に入れるぞ」
 「・・・・・入れる・・・・・」
(こんなおっきなの・・・・・入るのかな・・・・・)
キアの不安を感じ取ったのだろう、コードは優しくフカフカの耳を甘噛みしながら言った。
 「今十分お前の穴を解しただろう?雄同士はここでちゃんと繋がる様になってるんだ、力を抜いて横になってればいい」
 「う、うん」
 柔らかな草の上に改めて横たわったキアは、いよいよ自分がコードを受け入れるのだと思った。
兄弟を食べられない為とはいいながら、大好きなレンではなくコードと初めての交尾をしようとしている自分。
 「キア」
 「んっ・・・・・」
再び、口付けをされた。
口腔内を暴れまわるコードの舌に何とかついていこうと意識を向けた時、お尻の穴がぐっと広げられる感覚がした。
 「・・・・・!」
叫ぼうと思っても、コードの唇が離れない為に声を上げることが出来ない。
 「・・・・・っ」
(こ、こわ・・・・・い!!)

 「すっごく、気持ちがいいんだよ、キア」
 「お前も抱いてもらったら分かるって」

兄達の言葉が頭の中に浮かんだが、一瞬でそれは途切れてしまった。
兄達のうっとりとした言葉より、コードの優しい手より、キアの頭の中に現われたのはただ一言のレンの言葉だ。

 「キア!」

(レンさん!)
このままコードと交尾をすればレンに会えなくなってしまう。
キアはその恐怖に、一瞬でパニックになってしまった。


           


 「交尾は誰とだって出来る。お前とだってな、キア」
 「う、うん」
 「でも、俺がお前を抱かないのはどうしてだと思う?」
 「僕がまだまだ子供だからでしょ?レンさんを楽しませることも出来ないし、多分、初めてだから痛がって泣いてばかりかも知れな
いし・・・・・」
 「・・・・・お前、ホント馬鹿だな」
 「ば、馬鹿?」
 「自分を好きだと言う相手が、自分との交尾が初めてだったとして・・・・・俺はどう思うと思う?」
 「わ、わかんないよ、僕はレンさんじゃないし」
 「・・・・・まだまだ子供だな、キア」


           


(ぼ、僕が、誰かと初めてしちゃったら、そしたらレンさんはもう会ってくれない・・・・・っ?)
 慣れていた方がいいとか、初めてじゃない方がいいとか、キアは勝手にレンの気持ちを想像していたが、その答えはもうずっと前
にレンが出してくれていたのではないだろうか。
 「キア?」
 キアは目を見開いて自分に覆い被さってくるコードを見つめた。
綺麗な綺麗な金の瞳。
今は欲情に濡れているその瞳は、やはりレンではない。
 「!!」
(やだ!)
コードのペニスの先端は、既にキアの尻の蕾に潜り込もうとしていた。
しかし、この交尾をどうしても受け入れられなくなってしまったキアは、尻に力を入れてペニスの侵入を一生懸命拒む。
 「どうした?キア」
 今の今まで自分を受け入れていたキアの突然の拒絶に怪訝そうな目を向けてきたコードだが、既に勃ち上がったペニスはキア
の中へと入り込もうとしているのだ。
コードは舌打ちを打つと、そのまま一気に腰を沈めようとした。
 「!!」

 「キア!」

キアがギュッと目を閉じた瞬間、焦がれていた相手の声が響いた。



 鮮やかな青い空と緑の草むら。
その中で、真っ白く細い足が天に向けられて伸びていた。
 「キア!」
小さな身体に圧し掛かっている逞しい男の裸体。
どちらも全裸で、男は細い足の間に身体を入れ、その足を大きく広げて今まさに腰を沈めようとしていた時だった。
 「!」
 普段ならば他族の匂いに敏感な肉食動物である虎族が、こんなに近付くまでその気配に気付かないとは、よほどキアとの交
尾に夢中になっていたのだろう。
レンはその事実にカッと胸を燃え上がらせ、一気に間合いをつめると圧し掛かっている男・・・・・コードの肩を掴んでキアから引き
離した。
 「・・・・・前っ!」
 いきなりのことに体勢も整わないまま草の上に投げ倒されてしまったコードは、直ぐに起き上がって臨戦態勢を整えた。
全裸なので勃ち上がったペニスもそのまま見えるが、自分に自信のある虎族にとっては見せびらかせても良いほどの身体なので
羞恥心は無いようだ。
それは狼族のレンにも言えることで、コードの裸体を見ても何とも思わない。
 ただ、勃ち上がっているコードのペニスを見ると、たった今までキアと何をしていたのか想像してしまい、自然と表情は険しく硬い
ものになっていた。
狼と虎。2匹の獣が睨み合う。
 「レ、レンさん?」
 不意に、レンの耳にか細い声が聞こえた。
何時も聞き慣れた弾んだ楽しそうな声ではなく、涙で濡れたような声。
レンは躊躇い無くコードから視線を外すと、自分の背に庇うようにしていたキアを振り返った。
 「・・・・・キア」
 「レンさん・・・・・」
真っ白な・・・・・眩しいほどに白いキアの身体は、うっすらと上気していて艶かしかった。
身体のあちらこちらが濡れているのは、多分コードに舐められたからだろうし、下半身の・・・・・片手で収まるほどの小さなペニス
の周りも、キラキラと濡れて光っていた。
それでも、キアのペニスは怯える心そのままに小さく縮んでいたし、雄同士で唯一交尾の出来る尻の穴からは精液も血も流れて
おらず、赤く腫れてもいないようだ。
あれだけのコードのペニスを初めて受け入れたとしたら、絶対に傷付いただろうし、腫れもしているはずだ。
(・・・・・間に合ったか)
どうやら最悪の事態だけは免れたようだとレンは安堵したが、それでも甘いキアの身体を味わったであろうコードに対する怒りは簡
単には消えなかった。
 そして。
 「お前、どういうつもりだ」
肝心な時に邪魔をされたコードの怒りも相当なもので。
 「手放してから惜しくなったか」
 「手放したつもりは無い。こいつは最初から俺だけのものだ」
 「・・・・・逃げたくせに、よくものうのうと・・・・・っ」
高まるコードの殺気に、レンも正面から迎え撃つつもりで身構えた。