peril point












 自分は酒に強いらしい。
らしい・・・・・と、自分では自覚が無いのは、普段から酒を口にしているわけではないし、限界まで飲んだことも無いのでどれだけ
自分が飲めるのかは分からないのだ。
それでも、極たまに飲む機会があった時、彼らが特別弱いのかもしれないが、次々と酔い潰れていく友人達を尻目に、自分だけ
けろっとしていることはよくあった。
 多分、幼い時から父親に連れられてパーティーによく行っていたせいか、僅か一口だけだとしても高級な酒を口が覚えていたの
かもしれない。
 「・・・・・」
 「これは甘くて美味いですよ。少し、飲んでみませんか?」
 「・・・・・」
 静は、そんな友人達が羨ましいと思っていた。
自分も、少しくらいは何も考えずに、大好きな人に甘えたいと思う。
江坂がそう言って注いでくれる酒ならば、自分も少しだけ酔うことが出来るだろうか?



 よほどその日本酒の味が気に入ったのか、静は何時もは口を付けるほどしか飲まないのが、食事中もかなり杯が進んでいた。
一時間半ほどゆっくりと食事をし、迎えに来た車に乗り込んだ時も、珍しくぼんやりとした表情になって江坂の側にくっ付いてくる。
もちろんそれが嬉しくないはずも無く、江坂は口元に笑みを浮かべて静の腰を抱き寄せた。
 「どうしましたか?今日は甘えているように見えますが」
 「・・・・・鬱陶しい、ですか?」
 「いいえ、嬉しいですよ、とても」
 多分、静は酔っていない。今何を考えているのか、どうしたいのか、静はちゃんと分かっているはずだ。
それでもこうして甘えてくるのは、本人がそれを望んでいるから・・・・・。
 「静さん」
 「・・・・・」
 「明日は、確か予定はありませんでしたね」
 「・・・・・はい」
 「じゃあ、ゆっくりとあなたを愛することが出来る」
 「・・・・・」」
 はっきりと言葉でそう言うと、静の頬は酒のせいではなく赤く染まる。
その頬に唇を寄せながら、江坂は言った。
 「今は、視線を感じますか?」
 「し、せん?」
 「あなたがずっと感じていた、粘ついた視線です」
車の中でそんなものを感じるはずが無いのに、あえて江坂はそう訊ねる。
すると、静は目を閉じたまま、ううんと首を横に振った。
 「今は、江坂さんの視線しか・・・・・感じません」
 「もちろんですよ、静さん。こんなに可愛らしいあなたを見る権利は私しかいませんから」
 確信的に、江坂はそう静に言わせた。たとえ僅かな懸念でも、静の思いが誰かに向かうことなど許さなかったし、忘れさせること
で、この先江坂がその視線の主に何をしても、静が気にも留めない様に差し向ける為でもあった。



 マンションに着くなり、江坂は静の身体を抱き上げて寝室へと真っ直ぐに向かった。
その頃には静の微かな酔いも醒めてはいたが、今更風呂に入りたいとは言い出し難い雰囲気だった。
(ど、どうしよう・・・・・)
焦っているのに、静の表情は少しだけ眉を顰めた戸惑いの表情だけだが、江坂はその感情をちゃんと読み取ってくれるのだ。
 「シャワーを浴びたいですか?」
 「・・・・・はい」
 「私も一緒でいいのなら」
 「・・・・・江坂さんも?」
 「今は数秒も静さんから離れたくないんですよ。可哀想だと思ってくださるなら、ね?」
 落ち着いた江坂の声の中に、甘い官能の響きが混じっている。
静はぞくっと背中を震わせてしまった。
(俺が抵抗出来ないの・・・・・知っているくせに・・・・・)
この声には逆らえないことを知っているのに、わざわざ自分の許可を取ろうとしてくる江坂が恨めしい。
それでも上目遣いになってしまう静の視線を受けても、江坂は何時も以上に嬉しそうな笑みを浮かべているだけだ。
 静は変な顔だと思っていても、感情が表れるその表情を江坂は好きだと言ってくれる。何だか憎らしくて、静は江坂の掛けてい
る眼鏡を取ってしまった。



 「んあっ」

 クチュ クチュ

 バスルームの中に、舌が絡まる音が響く。
既に2人共服を脱ぎ捨て、江坂は降り注ぐシャワーの下で静の唇を貪っていた。
 人形のような綺麗な容貌をしている静は、その裸身も人形のように綺麗だ。元々色白の肌は光沢のある真珠のような色で、
胸元の小さな乳首は少しだけ桜色に色付いているだけ。
 体毛も薄く、本来はペニスを覆い隠すはずの下生えも淡く細くて、乳首よりも少しだけ濃い色の形の良いペニスが、今の口付
けでもう少し勃ち上がり掛けていた。
 「静・・・・・」
 この身体が自分以外の誰も知らないことを、江坂は自信を持って言うことが出来る。
既に中学の時に目をつけ、それから手に入れるまでの数年、静には彼が分からないように監視という護衛をつけていたし、自分
以外にも彼を狙う者達は容赦なく潰してきた。
 類まれな容姿を持ちながら、本人の性格はこちらが焦れてしまうほどにのんびりとしたもので、多分静は自分が何度も襲われ
かけたことを自覚していないだろうし、江坂がずっと静を見ていたことにも気付いていないだろう。
(今回の視線の主と変わらないかもしれないが・・・・・)
 「あっ、まっ、て・・・・・っ」
 「待てない」
 熱いシャワーで頬が紅潮した静の身体を壁に預け、江坂はそのまましゃがみ込むと、既に半勃ちになっていた静のペニスを口
に含んだ。
 「ああっ!」
 抱え込んだ足が引き攣るように緊張するのが手に伝わる。
綺麗な色と形のペニスは、先走りの液さえも甘く、江坂は2つの双球を片手で揉みしだき、ペニス全体に舌を這わした。
 「あっ、んっ」
 「・・・・・」
 「い・・・・・や・・・・・」
 「・・・・・」
 「俺だけ、なん、て・・・・・」
 一方的に与えられる愛撫が恥ずかしいのか、静は力なく江坂の肩を押し返しながら、何度もそう呟いている。
身体を重ねるようになり、愛し、愛されるようになって、静も最近は自分から江坂に愛撫をすることを望んだ。自分が気持ち良くな
ると同じように、江坂にも気持ちが良くなって欲しいのだと思っていてくれる・・・・・その気持ちが嬉しい。
 「名前、違いますよ」
 ペニスの先端を甘噛みし、江坂はようやく最近言い慣れてきたはずの言葉を促す。
すると、静はまるで酔ったかのように、喘ぎ混じりに呟いた。
 「りょ、じ、さ・・・・・凌二、さ・・・・・んっ」
 「場所を移しましょう。本当はシャワーで流したくないくらい、あなたの汗は甘いのに・・・・・」
これ以上、静の体液を洗い流してしまうのは惜しかった。



 一応、洗い流すだけでも自分の身体が綺麗になったような気がして、静は江坂が自分のペニスを銜えても汚いとは言わなかっ
た。
それよりも、自分も早く江坂を感じさせたいと、ベッドに横たわる江坂とは逆向きにその腰を跨ぎ、既に雄々しく勃ち上がっている
江坂のペニスを両手で持った。
 「・・・・・おっきい・・・・・」
 「無理はしなくていいんですよ」
 「・・・・・出来る」
 一番最初に江坂に自分のペニスを口で愛撫された時は、気が遠くなるほどの驚きと恥ずかしさを感じていた。
しかし、身体を重ねるごとに、その行為で相手が喜んでくれるのならば嬉しいという風に意識が変わってきた。
こんなに大きなものが自分の中に入ってくるなどとはいまだに信じられないが、ただ口に銜え、手で擦るという自分の拙い愛撫にも
ピクピクと素直に感じてくれるそれが可愛く思えて、今では静は自分からも江坂を喜ばせることに積極的になった。
 「ふむっ」
 「・・・・・っ」
 嵩のある先端を口に含むだけでも大変だが、江坂が漏らす声に感じてくれているのだと思えば嬉しい。
 「ふっ、んっ、あむっ」
頭を動かし、とても口に含みきれない部分は手で必死に擦る。
多分、今まで江坂がその手に抱いてきた人々から比べれば最低ランクの愛撫だろうが、それでも江坂は気持ちがいいと言って、
身体も反応してくれるのだ。
 「静さん」
 ますます大きくなっていくペニスに、射精の時が近いのかと思ったが、案外に江坂はそれ程声の調子を変えずに上半身を起き上
がらせた。
 「んんっ」
(まだ、止めたくない・・・・・っ)
 静はペニスを銜えたまま首を横に振るが、江坂はつっと静の背中に意味深に指を滑らせ、その指はそのまま尻の奥、小さな窄ま
りを撫でる。
 「んっ!」
 「あなたの可愛らしい口に出すのも気持ちがいいと思いますが、一刻も早くあなたの中に入りたいんです」
懇願するようにそう言われ、静はそれでも嫌だとは言えなかった。



 舐めて、濡らして、ローションでしとどに濡らして。

 「お、ねが・・・・・も・・・・・っ」

快感が高まるごとに、射精を妨げられた静の哀願に、江坂は通常より赤く染まった尻の蕾に自分のペニスの先端を宛がった。
直ぐには中に入れず、ゆっくりと双球の下から蕾までをペニスで撫で、焦れた静の細い腰が揺れる様を思う存分堪能すると、よう
やくその窪みに先端を止めた。

 グチュッ ニュル・・・・・ッ

 液体と肉体が絡み合う生々しい音。
狭いそこは、もう幾度江坂のペニスを受け入れたのか分からないほどなのに、挿入時の苦痛はどうしても消えないようだった。
静の眉間に皺が寄り、苦しそうな荒い息を吐くのは可哀想だが、それでも江坂のペニスに慣れた静の身体は、柔軟にそれを受け
入れていく。
 「あ・・・・・あ・・・・・うっ」
 「・・・・・静」
 一番太い先端部分を入れた江坂が名を呼び、その頬に張り付いた髪をかき上げてやると、静はうっすらと目を開いて嬉しそうに
微笑んだ。
その笑顔は、とても人形のように無表情な静が浮かべるものとは思えないほどに、鮮やかで綺麗なものだ。
この顔を誰にも見せたくないし、もちろん見せるつもりも無い。

 ズリュッ ズッ グリュッ クチュッ

 ゆっくりと、静の身体を傷つけないように動かしていた腰を、江坂は次第に激しく動かし始めた。
静の中のどこが感じる場所かは知っているし、江坂が開拓した感度の良い身体は、抱く毎に江坂をも翻弄してくれる。
 「あっ、やっ、ああっ」
 「・・・・・っ」
 江坂はグッと静の腰を掴んで身体を起こすと、そのまま座った形の自分の腰の上に小さな尻を落とした。
向き合う形になり、静は自分の体重で深く江坂と交じり合う。
 「はっ、はっ、あ・・・・・んっ」
 江坂が下から突き上げ、高い声で啼く静は、涙で潤んだ眼差しを向けてくる。
 「・・・・・っ」
 「・・・・・」
見つめ合い、絡まった視線が引き合うように、静が唇を寄せてきた。
隙間なく混ざり合った下半身と、お互いの唾液を貪るような口付けと。下も上も、そして身体全部が一つになっていくような気が
して、江坂は更にズンッと、激しく静の腰を落とした。
 「!」
 その瞬間、静は精を吐き出し、それは江坂の腹を汚す。
その熱さと淫らな匂いに誘われるかのように激しく腰を動かした江坂は、
 「・・・・・っ」
静の最奥で、その精を解き放った。
 「あ・・・・・あ・・・・・」
 座位で交わっている為、吐き出した精液は逆流しないまま静の内壁に浸透していき、その感覚にたまらなくなったかのように無
意識に襞が収縮する。
 「・・・・・っ」
 その怪しい蠢きに、一度の放出でほとんど萎えなかった江坂のペニスが再び静を苛め始めた。
 「ま、待って、まだ・・・・・っ」
 「まだ、足りないんですよ、あなたが」
江坂は静の言葉尻を取ってそう言うと、今度は自分がもっと楽しめるように、今まで以上にゆっくりとした動きで、静の中を存分に
味わうことにした。






                                            







今回は久し振りの2人のラブ具合を見ていただきました(笑)。
次回からはまたサスペンスもどきに戻ります。