RESET
3
今年高校3年生になった弟が言った。
「兄貴、ホスト止めたっていいんだぜ?学費は奨学金を貰うように頑張るし、生活費だってバイトして助けるからさ」
もう1人、中学2年生の弟も言った。
「俺だってバイトする!兄ちゃん、無理しなくったっていいんだよ!」
一緒に生活する家族だからこそ、弟達は優しく真面目な兄が夜の仕事で苦労していることを感じ取っているのだろう。
母親似の自分とは違い、父親に似た2人の弟は既に身長も体格も紘一より遥かに大きく、バスケットをしている末の弟などは
すでに180に近い身長だ。
それでも、紘一にとって弟達は自分の生きる糧であり、2人がいるからこそ夜の世界でも頑張ろうと思えた。
「大丈夫だよ。お前達はまだ学生なんだから、金のことは心配するな」
高い金を払って来てくれる客のことを考え、紘一はほとんどといっていい程プレゼントは受け取らなかった。
借金をしてまでも店に通ってこようとする客には厳しい態度で諌め、自分の売上げは出来るだけ店の皆に振り分けてもらうよう
に取り計らっていた。
自分達の生活を助けてくれた店に対しての恩返しのつもりだったが、そんな紘一の気持ちは皆に伝わっており、同伴もアフター
もしない紘一がNo.1なのもそれだけ絶大な人気があってのことだった。
ホストとして働いた3年余りで、2人の学費は十分出せるほどには貯めている。
金はあっても困らないが、きたない真似までしたいとは思っていなかった。
そんな生真面目な紘一だからこそ、遊び半分で仕事をする相馬が嫌いだった。
何度か街でキャッチをしている姿を見掛けたが、その時相馬はまるで挨拶のように女達にキスをしてやっていた。
セックスも、キスも、好きな相手としかしたことの無い紘一にとって、あまりにも軽い相馬の貞操観念には呆れることしか出来な
かった。
「・・・・・何の、つもりだ?」
そんな相馬に、今紘一は組み敷かれている。
ちゃんとしたホテルの、それもスイートの広いベットの上で仰向けになりながら、それでもまだ紘一はたかを括っていた。
多分、相馬は自分を毛嫌いする紘一を痛みつけたいのだろうと。
(キスまでしなくてもいいだろうに・・・・・)
唇を拭いたいが、相馬に両腕を押さえつけられている格好で、紘一は再度相馬を睨みつけて言った。
「離せ」
しかし・・・・・。
「聞こえなかった?俺、あんたを抱くって言ったんだよ?」
「バカなこと言うな。男同士だぞ」
「それでもセックス出来る」
「・・・・・ソーマッ」
「あんたに睨みつけられるのってゾクゾクするな。コウさん、いや、紘一さんだっけ、そう呼んでいい?」
「お前何を言ってるんだ?今なら許してやるから離せ」
「もう遅いよ。決めたんだ、あんたを俺のものにするって」
そう言いながら、相馬は片手をスラックスのポケット入れると、何かを取り出して口に含んだ。
「ソー・・・・・んぐっ!」
再び唇を塞がれた紘一は、口の中に何かが入ってきたのが分かった。
反射的に舌でそれを押し出そうとしたが、相馬は強引に舌を使って紘一の抵抗を封じ、紘一はその何かを飲み込んでしまった。
「な・・・・・に・・・・・?」
紘一の喉が動いたのを確認した後、相馬は口付けを解いた。
目の前の少し厚めの色っぽい唇が濡れている。
「あんたが気持ちよくなる薬」
「え・・・・・」
「少し待ってろよ。直ぐに気持ちよくなるから」
相馬の言葉の意味はじきに紘一自身の身体で実感した。
身体が熱くなり、息が荒くなる。
元々性欲は淡白な方だったのに、下半身が熱くなっていくのか分かる。
(嘘・・・・・だろ・・・・・)
「ねえ、紘一さん、疼いてきた?早く触って欲しいと思うだろ?」
「お前・・・・・あれ・・・・・は・・・・・っ?」
「媚薬。紘一さんと俺が気持ちよくなる薬だよ」
上半身裸になって煙草を吸っていた相馬が笑いながら言うと、やっぱりと思った反面、まさかという思いが紘一を襲った。
相馬が自分を痛めつける為にここまでするのかと信じられなかった。
目を見張る紘一に笑い掛けながら、相馬は人差し指で紘一の首筋を撫でる。
「ああ!」
その瞬間、今まで感じたことも無いような快感が紘一の全身を襲い、紘一は自分でも耳を塞ぎたくなるような声を上げて背を
仰け反らせた。
「ああ、美味しそう」
「や、やめ・・・・・っ」
「やめない」
ベットに乗り上がり、相馬は上から紘一を見下ろす。
「こんな美味そうな身体、今まで誰にも見せてないよな?」
「・・・・・っ」
「俺が最初で・・・・・最後のあんたの男だ」
まだ瑞々しい、しかし十分色っぽい男の身体がゆっくりと覆い被さってきた。
全ての服を脱がされた。
下着や靴下まで丁寧に脱がされ、紘一はまるで自分が幼い子供になったような気がした。
「あー・・・・・なんか、自分の想像力が貧弱なのが分かるな」
「・・・・・」
「こんなに綺麗な身体してるなんて・・・・・想像以上だ」
「・・・・・っ」
(馬鹿な事言うな・・・・・っ)
頭の片隅では確かに理性が残っているのに、紘一の身体は既に自分自身で制御が出来なくなっていた。
自分から手を伸ばし、相馬の首を捕まえて引き寄せる。
あんなに抵抗したキスを躊躇い無く交わし、その唾液さえも美味しいと飲み込んだ。
「あ・・・・・んっ」
そんなキスでさえ感じてしまい、紘一は既に勃ち上がってしまった自分のペニスを相馬の硬い腹筋に擦り付けて、貪欲に刺激
を貪った。
「・・・・・性質悪ィ・・・・・っ」
「はあっ?」
舌打ちをしたかと思うと、相馬は荒々しく紘一のペニスを掴み、扱き始めた。
テクニックも何も無い、ただ擦るだけの刺激にも敏感に反応し、紘一は呆気なく射精してしまった。
相馬の手とお互いの腹を濡らした白い液を、相馬はそのまま紘一の尻の奥の蕾に持っていく。
ニュル・・・・・、クチュ・・・・・ッ
身体の中に、何かが入り込んできた。
(な・・・・・んだ?これ・・・・・?)
普段なら排泄にしか使わないその部分に、反対に外から入り込んでくるもの。それが相馬の指だということに紘一が気付いたの
は、中の襞を爪で擦るように愛撫された時だった。
「ひい!はっ、あっ!」
情けない声を上げ、その指が自分の気持ちの良い場所に当たるように腰を振ってしまう。
自分が女になったような気がして、紘一の綺麗な目には涙が溢れた。
「・・・・・と」
「紘一さん」
「もっと、奥・・・・・にっ」
「・・・・・ちっ」
その瞬間、指が一気に引き抜かれ、その空間を埋めるように、大きな存在がいきなり入り込んできた。
相馬のペニスだ。
ズルッ、グチュッ、ズル
内壁を抉るように押し入り、散々奥を突いてくる。
自分のうねる内壁が相馬のペニスの形を驚くほどリアルに感じ取り、紘一は涙を流しながら相馬の腰にほっそりとした足を絡め、
淫らに腰を振り始めた。
「もっと・・・・・激しく・・・・・っ」
「紘一さんっ」
「ソーマ、ソーマッ」
こんなふうに切なく名を呼ぶのは薬のせいだと分かっている。
早く身体の奥深くに、相馬の熱い情熱を注ぎ込んで欲しいのは、自分が正気ではないという証明だ。
ただ・・・・・、強く自分を抱きしめてくる腕が嬉しいのは・・・・・どういう思いなのだろうか?
(・・・・・いや、これは俺の意思じゃない。俺の意思じゃ・・・・・)
紘一は相馬の腰の動きに自分も合わせながら、ただ薬の為だと何度も自分に言い聞かせることしか出来なかった。
![]()
![]()