竜の王様




第一章 
沈黙の王座








                                                             
※ここでの『』の言葉は日本語です






 熱くて、痛い。
痺れて、ジンジンして、吐きそうだ。
昂也は信じられない痛みを伝えてくる下半身に思わず力を込めてしまった。
 「・・・・・っ、力を入れるな」
 何か、しゃべっている。
昂也にこの痛みを与える男は、自分の真上から圧し掛かってきている。服を着たままなので一瞬何をしているのかと不思議な気分
になるが、男が身体を揺するたびに下半身の痛みは酷くなるばかりで、昂也は揺すられながらようやく自分の身に起こっていることを
理解し始めた。
(俺・・・・・強姦、されてるんだ・・・・・)
 男である自分がそんな目に遭うとは想像もしていなかったが、この痛みが夢だとはとても思えなかった。
揺れている足先は間違いなく自分のものだし、男の動きに合わせて揺れている身体も自分のものだ。
 『はっ、うあっ、う・・・・・ぐっ』
(く・・・・・るし・・・・・っ)
尻から内臓を押し上げられているような感じだ。
自分も持っている男の証が・・・・・ペニスが、自分の中に深く入り込んでいる。大きさや熱さを、身体の中で感じてしまう。
昂也はギュッと目を閉じた。
(は・・・・・やく、終われ!)
無かったことにも、夢にも思えないのなら、早く終わってくれと願うことしか出来なかった。



 人間の少年の中は驚くほど熱かった。
元々体温の低い竜人は、身体を合わせた時も熱いと痛烈に感じることは無い。
さらにそれに合わせ、紅蓮自身楽しんで誰かを抱くということが無かった・・・・・ただ欲望を吐き出す為と、経験を積むだけ・・・・・の
で、夢中になるということも無かった。
(人間のくせに・・・・・っ)
 こんな風にあるはずの無い欲情をかき立てる目の前の人間の少年が憎らしい。
自分を絡み取り、こんなにも高揚させるこの人間の少年が・・・・・。
 『うっ、はっ、はあっ』
 「・・・・・っ」
 細い両手首を押さえられている人間の少年は、ぎゅっと強く拳を握り締めている。
時々何かを掴もうと開いたり閉じたりしているそのさまを見ていると、紅蓮はこの人間の少年が何をしようとしているのか気になってし
まった。
 「・・・・・手を離してみろ」
 「紅蓮様」
 「離せ」
 言われた通りに黒蓉と浅緋が手を離した。
すると、途端に細い腕が紅蓮の首に縋るようにしがみ付いてくる。
 「無礼なっ」
直ぐに黒蓉がその手を引き剥がそうとしたが、
 「よい、そのまま」
なぜか、紅蓮はそのまま・・・・・人間の少年をしがみ付かせたままでいいと思った。
 「聞こえるか、私の声が」
 紅蓮は人間の少年の耳元で囁いた。
その間も華奢な身体を穿つ陰茎の動きを止めることは無く、心なしかしがみ付いてきた頃から中が僅かに柔らかく、まるでうねる様
に紅蓮の陰茎に絡み付いてくるような感覚がした。
こんなに心地良いのは初めてかもしれない。
 「私の名は紅蓮」
 『ひゃっあ!』
 グッと、更に深く陰茎を挿入させた。
中が締まり、紅蓮にとっては気持ちが良かったそれも、人間の少年にとってはかなり辛いものだったらしい。
荒い息が更に苦しそうに早まっている。
 「お前の名は」
 『も・・・・・やだ・・・・・っ!』
 「分からぬ」
 『や、やめて、よ・・・・・おっ』
 「その言葉では分からぬと申したであろう」
 紅蓮は人間の少年の足を掴むと、グッと大きく押し広げた。
自分の陰茎が突き刺さっているそこは真っ赤に充血していて、このまま引き裂いてしまいそうな感じがする。
多分、この人間の少年にとって自分は初めて受け入れる他人なのだろう、それが当たり前だと紅蓮は思っていた。自分が抱く相手
が、既に他人を受け入れているはずが無い。
(これは、私のものだ)
 陰茎をゆっくり引き出し、抜ける寸前に又深く突き入れる。
耳に響く淫猥な水音と、肉体がぶつかり合う音。
 「・・・・・赤い」
 結合部分からは、赤い血が滲み出してきた。
どうやら中か、それとも入口が切れてしまったようだが、この竜人とは違う赤い血が紅蓮の視覚を楽しませた。
(人間の血が赤いというのはまことだったのか)



 何かが口の中から出そうな衝撃がずっと続いている。
とにかく昂也はその痛みから逃れる為に、自分を強姦しているはずの男にしっかりとしがみ付いていた。
 『もっ、もうっ』
あまり嬉しくないことだが、自分の身体の中を掻き回しているものの質量が急激に増してきたのが分かった。
同じ男なら分かる、もうすぐ男は射精するのだろう。
(中で・・・・・出す気、なのか?)
 容赦の無い男の動きには、昂也を気遣うような素振りは少しも感じられなかった。たぶん、このまま男は自分の中で射精する気な
のだろう。
それならそれで仕方ないと、昂也は諦めていた。今はとにかく、この息苦しさと痛みから逃れたくて仕方が無い。
 『も・・・・・い、から、出せよ!』
 その言葉が分かるはずがなかった。
だが、男は昂也がそう叫ぶと同時に、腰を強く引き寄せて自分の身体を密着させた。
 『!』
中に、激しい衝撃を感じる。
熱くて、濡れた、普通に生活していれば経験することはなかったはずの感覚。
(・・・・・終わった・・・・・)
何時まで続くか分からない男の射精を最奥で受け止めながら、昂也はようやく終わった陵辱の時間に、思わず涙を流してしまった。



 身体を離すと、紅蓮の首にしがみ付いていたはずの手も解けて、くったりと人間の少年は寝台の上に倒れこんだ。
 「・・・・・」
限界まで自分の陰茎の形に広がっていた尻の穴からそれを引き抜くと、直ぐにトロッとした赤い血と白い精液の混じったものが中から
垂れてきた。
 「・・・・・」
 「・・・・・」
  動かない細い身体、このまま気を失う前に確かめねばと、紅蓮は自分の下半身の処理もせずにそのまま首の後ろに手を引き入
れて華奢な身体を起こしてみせた。
胸が荒く上下している。
 「おい、寝る前に私の質問に答えろ」
 『・・・・・』
汗で濡れた前髪の間から、ゆっくりと黒い瞳が現れて紅蓮を見つめてきた。
 「私の言葉が分かるか」
 『は・・・・・なせ・・・・・』
 「・・・・・」
(失敗か・・・・・)
 紫苑の言葉で人間の少年を抱いてみたが、精を注ぎ込んでも言葉は・・・・・意思の疎通は出来ないようだった。
 「申し訳ございませんっ」
自分の不用意な言葉で紅蓮に人間を抱かせてしまったことを紫苑は直ぐに謝罪したが、元々その可能性があるというだけで確かな
話ではないということは言っていたのだ。
 「・・・・・よい、私も可能性を試しただけだ」
 「しかし、御身が汚れてしまわれて・・・・・」
 「・・・・・湯浴みをする。その人間の後始末は・・・・・」
 「私が」
 自分が言い出したことの責任を取る為か紫苑が進み出た。
紅蓮はそれに頷くと、簡単に衣を整えて部屋を出て行く。
今だ身体が熱く、熱を持っている感じがするが、それを表情に出すことは無い。人間に対して欲情したなど、これまでの自分の言動
をよく知っている臣下達にはとても見せられなかった。
(あれは一時・・・・・ただ、気が高揚しただけだ)
けして、あの人間の少年が特別だからというわけではない。
 「・・・・・」
紅蓮は浴場に向かいながら、何時もとは違う自分の気持ちを必死に紛らわそうとしていた。