昔日への思慕
15
畳の上で直に・・・・・というのは初めてで、真琴は彷徨う自分の手をどこにやればいいのか迷った。
海藤に抱かれるという行為には慣れてきたというものの、寝室以外でというのにはまだ途惑いが大きい。
マンションでは時折バスルームでという事もあるが、基本的にゆっくりと真琴を愛してくれる海藤は、あまりどこででもということは
なかったからだ。
だからこそ、見知らぬ場所での慣れないシチュエーションに、真琴は内心どうしようと焦っている。
「か、海藤さん」
「俺だけ見ていればいい」
「・・・・・」
「愛してる」
「・・・・・俺も」
(・・・・・海藤さんだけ・・・・・見てればいいんだ・・・・・)
真琴は安心したように溜め息をついた。
身体から力が抜け、全身で自分を受け入れてくれようとしている真琴を、海藤はきつく抱きしめて唇を重ねた。
目まぐるしい出来事の中で、ただ一つの真実がここにある。
ただ一途に自分を慕ってくれるこの存在を、海藤は身体全てで感じたかった。
「・・・・ん・・・・・んあっ」
シャツのボタンを外し、現われた白い肌の上の桜色の乳首を口に含むと、真琴は高い声で啼いた。
少し強く吸い、歯で噛んで再び舌でねぶる。
桜色が更に鮮やかに色を増していくのに満足し、海藤は滑らかな肌に舌を這わせていった。
(・・・・・甘い・・・・・)
不思議と、真琴の肌は何時も甘い。だからこそ、海藤は何時もその全身をくまなくキスし、舌を這わせてしまう。
「ん・・・・・や・・・・・っ」
恥ずかしがった真琴が身体を捩り、隠れてしまった可愛いペニスの代わりに現われた小さな尻。
「!」
そっと手を触れただけで、真琴の身体は敏感に反応した。
「そ、そこ・・・・・っ」
「ん?」
「ま、待って、もうちょ・・・・・ゆっく・・・・・」
「待てない」
出来れば今直ぐにでも、熱く狭い真琴の最奥にペニスを突き刺したかったが、それでは真琴の身体が傷付いてしまうという事
も分かっていた。
だからこそ、海藤は真琴が泣いて止めても、蕾への愛撫を丹念にする。
自分の欲望よりも真琴の快感の方が優先だからこそ、自分を受け入れてくれる唯一のこの部分が快感で溶けてしまうように、
海藤はそこに唇を寄せ、舌を這わせた。
「・・・・・っ」
海藤の気持ちを感じとれるからこそ、真琴はどんなに羞恥を感じても最終的に海藤を受け入れる。
風呂に入りたいとか、せめて汗を拭き取ってしまいたかったとか思っていても、セックスというものがそんな綺麗なものではないと
いうことは真琴も知っている。
お互いの吐き出すものも、汗も、唾液も、全てを受け入れることが出来るからこそ身体を重ねることが出来た。
「・・・・・んっつ、あっ、ああっ」
「真琴」
「あっ、はっ」
「名前、真琴、名前を・・・・・」
低い囁きが耳に届く。
真琴は既に涙で滲んでしまった目を、上から覗き込んでくる海藤に向ける。
「・・・・・しさん・・・・・」
「真琴」
「貴士さん・・・・・っ」
こんな時でしか名前を呼ぶ勇気がない自分を申し訳なく思うが、意識が飛んでしまったからといういい訳が言えるからこそ、
躊躇うことはしない。
「貴士さん、貴士さん・・・・・好き、大す・・・・・き・・・・・」
ようやく解れた蕾に、海藤は待ちかねていたペニスを突き刺した。
「ああぅ!!」
一番最初に受ける衝撃にどうしても歪んでしまう真琴の顔を見つめながら、海藤はしっかりと結び合っている手に力を込めた。
痛さを伝えるかのように、海藤の手の甲に真琴の爪が食い込むが、こんな僅かの痛みは真琴の苦痛に比べればなんともない。
「真琴・・・・・」
「好き・・・・・」
「・・・・・」
「好き、貴士さん、好き・・・・・っ」
苦痛など洩らさないように、ただ海藤の名を呼び、好きだと繰り返す。
可愛くて、愛しくて、どうにかなりそうだ。
「・・・・・つっ」
畳に上で揺すられて背中が擦れたのか、真琴は小さく痛みを洩らす。
それを悟った海藤は、ペニスを突き刺したまま真琴の身体を起こした。
「ひああ!!」
真琴の尻が海藤のスラックスに当たる。
ごわついたその感触と、最奥を突かれた衝撃に、真琴の閉じることが出来ない口から唾液が零れた。
「・・・・・っ」
その滴さえ零すのは惜しいと、体制的に真琴を下から見上げる形になった海藤は下からそれを舐め上げた。
「!」
それが感じたのか、海藤を含んだ真琴の中がギュッと締まり、その刺激に海藤も端正な眉を顰めた。
海藤を上から見つめるあまりない体制に、真琴は途惑いながらも身体を揺らし続ける。
真琴の中を淫らに掻き乱す海藤のペニスは熱いほどだったが、海藤も自分の中を熱いと感じているのだろうか。
「・・・・・あっ、ああっ、んっ!」
羽織っただけのはだけたシャツに、前を寛げただけの格好のセックス。見た目は刹那的な交わりなのに、気持ちは深く繋がって
いる。
「・・・・・っ、真琴っ」
「・・・・・っつ」
(か・・・・・ど・・・・・さ・・・・・)
下から、ひたむきな視線を向けてくる海藤を見て、真琴は不意にその頭を抱き寄せて自分の胸にあてた。
「ず・・・・・と、いっしょ、だからっ」
「!」
「ずっと・・・・・!」
一瞬、息をのんだ海藤が、次の瞬間息が止まるかのように強く真琴を抱きしめてきた。
その動きに真琴は精を放ってしまい、間をおいて身体の最奥に熱い飛沫を感じる。
深い交わりの余韻に、しばらく2人はそのまま離れることはなかった。
![]()
![]()