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まさか、郁がこんなに早く自分のマンションに来てくれるとは思わず、そして、見舞いに来ると電話があった後も、こんな展開にな
るとは思わなかった日高は、当然のようになんの準備もしていなかった。
(ローションか、何かあればいいんだが・・・・・)
自分のマンションには女を連れ込まない日高は、ベッドルームにもセックスに関するものは置いていなかった。
男同士のセックスは、かなり念入りに受け入れる方のそこを解さなければ大変なことになる・・・・・それは知っているだけに、日高は
せっかくの郁の誘い文句にそのまま理性を手放すことが出来ず、自分の唇に触れている郁の指を掴んで身を起こした。
「あ、あの」
「直ぐ、戻ってくるから」
「で、でも・・・・・っ」
中途半端な状態で取り残されてしまう郁は身の置き所がないのだろう。
無駄に不安にさせるよりはと、日高は正直に説明した方が良いだろうと思った。
「お前のそこを濡らすものを探しに」
「ぬ、濡らす?」
「女と違うんだから濡れないだろう?」
「!」
ようやく、日高の言葉とその意味が頭の中で合致したらしい。
瞬時に顔を赤くしてしまった郁の様子に苦笑した日高は、そのままベッドからおりた。
「大人しく、待ってろ」
素っ裸のまま、堂々と部屋を出て行く日高の後ろ姿を見送りながら、郁は居たたまれない思いだった。
(少しは隠したら良いのに・・・・・)
もちろん、見せても恥ずかしくない身体だとは思うし、自分の家なのでどういう格好をするのも自由だが、一応ここには自分という
他人がいるのだ。
(あ・・・・・も、もうすぐ、他人じゃなくなるん、だっけ)
身体を重ねれば、直ぐに2人が親密な関係になるとは思わないが、それでも裸を見て目を逸らすような関係以上にはなるかも
しれない。
そう思った郁は、ふと自分は何をしていればいいのだろうかと考えた。
「お、俺も、何か・・・・・」
頭の中で、今まで演じてきた様々な受け側のことを考えてみる。強姦や、輪姦はもちろん問題外だが、一応、お互いが了解の
上で身体を重ねるという場合、こちらももっと積極的にならなくてはいけないはずだ。
(中、どうしよ、中を柔らかくしないと・・・・・入んない、よな)
あれ程の質量と大きなのものが、自分のあそこに入るはずがない。
「・・・・・」
郁はそろそろと上掛けを捲り、閉じている自分の足を見下ろす。
薄い下生えの中から勃ち上がっているペニスは、日高の愛撫でかなり濡れてきているものの、確かにこれだけでは滑りが足らない
かもしれない。
「・・・・・見ないと、分かんないし」
少しだけ、足を開いてみた。身体が硬いので、自分のあそこを見ることはとても出来ないとは思うが・・・・・。
(た、試して、みよっか・・・・・な)
足の間に片手を差し入れた郁は、ギュウッと目を閉じたまま、さらに奥に指先を伸ばしてみた。
キッチンにはあまり良いものが見当たらず、日高はそのままバスルームに向かった。
「・・・・・これで、いいか?」
髭を剃った後に顔に塗るクリームだが、顔に塗るものなので悪いものではないだろう。これ以上探す時間は勿体無い気がして、日
高はそれを持って寝室に戻った。
「痛っ!」
ドアを開けようとした瞬間、いきなり中から小さな悲鳴が聞こえてきた。
「郁っ!」
直ぐに中に飛び込んだ日高は、そこで思い掛けない光景を目にした。
「・・・・・何、やってんだ?」
「ひ、日高、さん」
郁は両足を広げ、その間に手を差し入れて、片手で勃ち上がったペニスを押さえ、もう片方をそれよりも奥・・・・・双丘の狭間
に伸ばしている。
その指先がどこに触れているのかなど、聞かなくても分かりきっていた。
「お前、1人で何を・・・・・」
「む、無理ですっ」
「郁?」
「指1本だって入らないのに、日高さんのそれ、絶対に入るわけない!」
半分泣きそうになりながら訴えてくる郁に、日高は溜め息を噛み殺した。ここでそんな様を見せれば、郁がもっと落ち込むのは目
に見えたからだ。
「・・・・・当たり前だろう、まだ全然解してないのに」
「ほ、解すっていっても、俺達、プロじゃないのに・・・・・」
「プロって、何のプロだよ。いいか、郁、俺達は知識は腐るほどあるが、それを実践したことが無い素人だ。でもな、知識があるん
だから出来ないことはないんだよ」
「・・・・・」
「あっという間に俺のを飲み込めることが出来るぐらい解してやるから」
傍で聞いていればおかしな宣言かもしれないが、郁や日高にとってはその理由でも十分だった。全く何も知らない状態で始める
わけではなく、確かに知識だけはあるのだ。
日高は郁が少し落ち着いた様子が分かると、自分も再びベッドの上に乗り上げて郁の手を掴む。
「ひ、日高さん?」
「お前も出来るだけ協力しろよ?」
そのまま郁の身体を再び横たわらせると、日高はぐっと大きく細い足を開いて、自分の身体をその間に割り込ませた。
自分の指の爪先さえも入らなかったそこに、日高の大きなペニスが入るわけが無い。
いや・・・・・小説や漫画では、子供の腕ほどもある大きなペニスが、小さな少年のそこに確かに入っていた。
(じゃ、じゃあ、もしかして・・・・・入るのか?)
なまじある知識のせいで、絶対に無理だということは言い切ることが出来なくなった。
「足を開いて」
「・・・・・っ」
「郁、言う通りにしなければ、お前を抱くことが出来ない」
「・・・・・」
ゆっくりと太股を手の平で撫でられ、郁は何とか両足を開いていった。ここで協力をしなければ、確かに自分と日高は一つになれ
ない。
なれなかったら・・・・・自分が本当に日高をどう思っているのか・・・・・分からない。
(・・・・・ち、がう?)
いや、身体を重ねたら想いが分かるなんていうことは、ただの自分への言い訳かもしれない。日高への想いが無かったら、好きだ
と思わなかったら、とても自分の恥ずかしいところを全て見せようなんて思えるはずが無かった。
「どうやったら身体から力が抜けるか、分かるな?」
「・・・・・はい」
郁は小さく頷き、何度も深呼吸を重ねて、身体から力を抜こうと頑張った。
郁が協力してくれるので、日高は軽々とその腰を自分の膝の上に持ち上げ、双丘の狭間・・・・・少し濃いピンクになっている蕾
に指先を触れた。
「!」
「・・・・・」
確かに、郁の言う通り、このままでは指先さえも入らない。
日高は持ってきたクリームを指先にたっぷり掬い取ると、丹念に蕾に塗りつけ始めた。
「ふ・・・・・っ」
「力は入れるなよ」
「・・・・・」
郁は頷くと、何とか自分のそこに触れる日高の指から意識を逸らそうとしているらしい。
(演技では、あんなにも男を誘っているのにな)
一番犯したい受け声という、郁にとっては不名誉なグランプリを先週取ったばかりだ。甘く蕩けた声を早く聞きたいと思うが、その反
面、演技の声は聞きたくないとも思う。
直ぐに受け入れることは出来ず、戸惑い、苦痛を感じ、それでも、必死で身体を開く・・・・・そんな様を、自分だけが見て、聞き
たいのだ。
「郁」
そして、自分のこの声も、きっと郁しか聞くことが出来ないはずだ。
照れくさくて、それでも受け入れてもらうことが嬉しくて、そんな自分の気持ちをごまかすように演技をしようとする自分。
他の人間には、とても聞かせられない声だった。
「・・・・・痛いか?」
「い、痛い、けど、苦しいが、強く、て」
「もう2本入っているからな」
「す、凄い・・・・・」
(あんなとこに、指が2本・・・・・本当に入るんだ・・・・・)
知識通りの現象に、郁は本に書かれてあることも本当なんだと改めて思っていた。
クチュクチュという身体の中を動き回るいやらしい音はそのまま頭の中に響くようで、恥ずかしさは少しも薄れては来ないものの、そ
れでも徐々に日高を受け入れる準備が整ってくることに、驚きと共に少し・・・・・嬉しかった。
(男同士でも、セックス出来るんだ・・・・・)
日高の思いを受け入れてもいいのだという証のようで、安堵した郁の唇からは甘い声が漏れ始めた。
「ん・・・・・っ」
「ここが、いいのか?」
グリュッ
内壁を骨ばった指でグルっとかき混ぜられ、郁は高い声を上げた。今まで、出したことの無いような声だ。
「前立腺があるはずなんだが・・・・・」
「きゅ、急に、動かさないで下さいっ」
「ほら、ペニスの裏側の、このあたり・・・・・」
指は探るような動きで、肛孔の中を動く。
(ぜ、前立腺というのは、ペニスの裏側にある一番感じる場所、だっけ。そこだけで射精してしま・・・・・っ)
「ひゃあ!!」
いきなり、下半身に電気が走ったような感じがして、郁は腹を大きく波立たせながら身体を捩った。
(な、何っ?今のっ?)
ピリピリ、ゾワゾワ、ズキズキ。
感じたことの無い感覚が身体を襲って、そのまま日高の手を受け入れていることが怖くなった。とにかく、少し時間が欲しくて、郁
はハアハアと息を荒げながらも頼んだ。
「す、少し、休ませ・・・・・」
「ここか」
「んんっ!!」
郁の反応に、日高は嬉しそうに笑うと、その指を引き抜くどころか、探し当てた前立腺の場所をさらに強く指の腹で押して、爪
先で引っ掻いた。
「うぅっ!」
その瞬間、郁は我慢出来ずに漏らしてしまう。いや、漏れたというよりも、ふき出してしまったというのが正しいのか・・・・・郁の精
はそのまま日高の逞しい腹を汚してしまった。
「はぁ、はぁ、はぁ」
息が、苦しくてたまらない。
射精する瞬間は、快感というよりも怖さの方を感じてしまったが、それでも、こんなにも呆気なく、そして、長い射精は始めての経
験だった。
(も、もしかして、これがイクって・・・・・こと?)
(・・・・・凄いな)
呆気なく射精してしまった郁の姿に、日高は思わず見惚れてしまった。
繊細で、整った容姿の郁だが、何時もはどこか人形のような綺麗さを強く感じていたが・・・・・今の郁は、まさに生身の人間という
姿で、淫らで、艶かしかった。
「郁」
名前を呼んでも、快感が強過ぎたのか、郁の表情はどこか虚ろだ。
「気持ち良かったか?」
それでも、そう聞いた日高に、潤んだ瞳が細められた。
「う・・・・・ん」
「・・・・・」
「怖い、けど・・・・・」
前立腺の刺激で射精したことなど初めての経験で、怖いと感じても当たり前だと思う。
ただ、これで自分の中の知識に間違いがないという確信が持てた日高は、キュウッと中に入れたままの指を締め付けてくる肛孔か
ら指を引き抜くと、
ヌチュ
自分のペニスの先端を宛がう。
「息を止めるなよ」
「ひだ・・・・・」
「郁」
一度、身体を折り曲げて郁の唇にキスをした日高は、ヌルヌルと肛孔の入口に何度かペニスを擦りつけるように滑らせて、少しだ
け口を開いていた肛孔に先端を押し付けて、グッと腰を突き入れた。
「ふぐぅっ!」
思った以上の圧迫感に、容易にペニスは中に入っていかない。先端の一番太い部分全てを飲み込む前に、とうとう日高は押し
入ることも退くことも出来ないで止まってしまった。
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