STEP UP !
32
まだ腰が浸かるほども溜まっていない湯船の中に、上杉は太朗を後ろから抱きかかえるように入っていた。
「んっ」
熱い湯のせいか、それとも自分の手が触れているペニスへの愛撫のせいか、太朗の頬は紅潮し、口は喘ぎを漏らし続けるよう
に僅かに開かれていて・・・・・。
普段、歳以上に幼い表情を見せる太朗の、こんな色っぽい面を見ることが出来るのは自分だけで、上杉はうっすらと笑みを
浮かべたまま、背後からペロッと首筋を舐め上げた。
「!」
健康的に日焼けした肌。太陽の匂いのする、まだ少年のような瑞々しい身体。
この身体を、大人の自分の欲望のために食らってもいいのかどうかと何時も考えるものの、無意識の内に自分を誘う眼差しに
勝てるはずもなく、上杉は何時も年甲斐もなくその身体を貪っている。
何度抱いても、自分の欲望を注ぎ込んでも、太朗という人格は全く変わらない。
それが嬉しくて、その反面、全てを自分の色に染めてしまいたくて・・・・・上杉は相反する思いに悩むというよりは楽しみながら、
若いゆえに反応の早い太朗の身体を弄り続けた。
「あっ、はっ、んっ」
閉じることが出来ない唇から、飲み込めない唾液が顎を伝って湯の中に落ちてしまう。
後ろから伸びてきた上杉の大きな手が、既に勃ち上がっている自分のペニスを思う様に弄っているせいなのだが、それを止めよう
と伸ばすはずの手は、しっかりと上杉の腕に縋りついてしまっていた。
「んっ」
「どうした、ここが気持ちいいのか?」
被っていた皮を引きずり下ろされ、剥き出しのペニスの先端を湯の中で弄られるのは痛い。
上杉の手は自分の手よりも大きくて、それなのに指先は繊細に動いて、自分の拙い自慰なんか足元にも及ばないような巧みな
愛撫を与えてくれるので、痛みの中に感じる快感に、腰の奥の方からゾワゾワとした快感が湧きあがってきていた。
不意に、項に笑うような息が掛かってしまい、太朗はビクッと肩を竦める。
「タロ、俺の手に押し付けてるぞ」
「う、嘘・・・・・っ」
「嘘なもんか。ほら、このヌルヌルしたものは何だ?お湯じゃないだろう?」
「・・・・・っ」
ペニスを弄っていた片手が湯の中から出てきて、太朗の目の前まで持ち上げられた。もちろん、湯で濡れているのは当然なのだ
が、少しだけその濡れた部分が粘ついているのは・・・・・。
(き、気のせい、だよっ)
風呂の中でこんな風に漏らしてしまうなど、恥ずかしくて考えたくもない。
目を逸らそうとした太朗だが、上杉はそれを許さないとでも言うかのように、まだペニスに絡み付いていた手に力を入れてきて、太
朗は思わずうっと声を漏らしてしまった。
「ジ、ジローさ・・・・・っ」
「出していいんだぞ」
「お、お風呂の、中っ!」
「いいじゃねえか、何時も互いのもんで身体を濡らしてるだろ」
「・・・・・そ、いうっ、こと・・・・・っ」
いったいどんな顔でこんな恥ずかしいことを言っているのだろうと思うが、振り返ってその顔を見ればさらに自分自身が追い詰め
られてしまうような気がしてしまう。
太朗はただ、尻にきゅっと力を入れ、この湯船の中にだけには射精してしまわないようにとした。
(・・・・・意地っ張りめ)
ここには自分達2人しかいないのでどんなに乱れても全く構わないというのに、そんな風に何時までも頑固に我慢している姿を
見ていると突き崩したくなってしまう。
バシャッ
「あっ」
少し大きな水音をさせながらさらに太朗の足を大きく広げた上杉は、片手でペニスを弄り、もう片方の手で張り詰めた双球を
揉みしだきながら、首筋にゆっくりと舌を這わした。
「やっ、やだ・・・・・っ」
「まだだぞ、タロ」
このくらいはまだ甘いと、上杉は双球を弄っていた手をするりと移動させ、まだ硬く閉じられている尻の奥・・・・・蕾に指先を触
れさせる。
「い、痛いってばっ」
「嘘付け、ここはまだ元気だぞ」
痛みのせいで萎えてはいないと、握ったペニスを意味深に扱いた。
その途端に太朗が身体を大きく揺らしたので、水音がさらにバスルームに響く。
「ここで指を入れたら、湯が入るな」
「や、止めてよっ、上がってからでいいじゃんっ」
「味見くらいはいいんじゃねえか?」
「だからっ、どうしてそうなるわけっ?」
「お前に飢えてんだよ、タロ。俺のためを思うなら、このまま可愛く喘いでろ」
勝手なことを言っているという自覚はあるものの、上杉はそのまま指を動かし続け、とうとうその1本をまだ狭い蕾の中に差し入
れた。
「・・・・・っ」
その瞬間、湯が入ってくることを恐怖に思ったのか、太朗のそこがきつく絞まり、上杉の指を食んでしまう。
「おい、力を抜けよ」
「で、出来な・・・・・」
「何時もしてるだろ、ほら、ゆっくりと息をしてみろ」
少し鼻を鳴らしながら、それでも太朗はゆっくりと呼吸を始めた。
吸って、吐いて、吸って・・・・・何度も繰り返していると、上杉の指を締め付けていたそこが僅かにだが緩んだ。その隙を逃さずに
根元まで指を入れた上杉は、そのまま太朗の快感を呼び起こすかのように内壁を刺激し始める。
「んあっ、はっ、あっ」
熱く、きついこの中に、早く自分のペニスを突き入れたいが、こうして一方的に可愛がって、太朗が啼く様を見ているのも楽しく
て・・・・・上杉は中を弄る指の動きを止めることが出来ない。
やがて、少し中が蕩けた頃にもう1本の指を入れると、出来た隙間から中に湯が入ってしまったらしく、太朗が本当に半泣きに
なりながら首だけを後ろに向けてきた。
「ジ、ジローさっ、もっ、ヤダ・・・・・ッ」
「タロ・・・・・」
「が、まん、出来な・・・・・よ!」
「我慢するな」
チュッと耳元にキスをしてやりながら、身体の中に入れた2本の指をバラバラに動かし続けると、太朗の呼吸がどんどん荒くなっ
てくる。中も、今まで以上にキュウッと強く指を締め付けてきて・・・・・もう、イクのは目に見えていた。
「タロ、愛してる」
「!!」
囁くと同時に、強くペニスを扱き、内壁をぐっと指で突き上げた途端、太朗の頭が自分の肩に強く押し付けられ、次の瞬間、
湯の中に白いものが漂った。
(し、信じられない!)
声も出ない羞恥というものがあるということを、太朗は今日、経験してしまった気がする。
「はぁ、はぁ、はぁ」
射精直後の心地良さと脱力感に、そのまま上杉にもたれかかってしまっていたが・・・・・。
(・・・・・え?)
自分の腹に掛かる湯の中に、僅かに見える白いもの。シャンプーが湯の中に落ちているのかと一瞬考えたが、
「ああーーーーー!!」
「なんだ、煩せえぞ」
上杉の文句など一切無視した太朗は、そのまま白いものを手で何度もすくい上げて洗い場に流し、力が抜けてしまった足で
何とか立ち上がると、そのままシャワーを取って流し始めた。
あの白いものが何なのか、直ぐに思い当たってしまう。湯の中で射精してしまうというありえない失態を犯してしまい、それを自
分の目で見てしまったことのショックは大きくて、太朗はそのまま逃げるようにバスルームから飛び出してしまった。
「ジローさんめ・・・・・っ」
慣れていない自分をあんな場所で追い詰める上杉が悪いと口の中で毒吐くものの、太朗の足が向かう先は上杉のベッドル
ームしかない。
身体は濡れたままで、そこにあったバスローブを勝手に羽織ってきたものの、上杉の物らしいそれはあまりにも大きくて・・・・・そ
れがさらに頭にきた。
「もうっ、直ぐ追っかけてこいよな!」
怒っているのに、直ぐに後を追い掛けてきてくれない上杉に焦れてしまうようなことを言ってしまう。
太朗は頬を膨らませたまま、少しだけ開いている廊下に続くドアをじっと睨んでいた。
大声で叫びながら太朗が飛び出していった後、上杉は笑いを押し殺しながらシャワーを浴び、太朗が証拠隠滅をした湯船の
湯を抜いてから浴室から出た。
当初の予定では、裸のままの太朗を抱いてベッドに運ぼうと思っていたのだが、一応自分用にと用意してあったバスローブは太
朗に取られてしまったらしい。
「まったく」
口から零れてしまう言葉は、自分でも呆れるほど甘いもので、上杉は腰にバスタオルを巻いた姿でバスルームを出ると、そのま
まキッチンに行ってからミネラルウォーターを手に取り、きっと待っているだろう太朗の元へと悠然と足を運んだ。
「遅い!」
ドアを開けた途端に投げつけられた言葉。
上杉は目を細めてその罵声を聞くと、太朗に見えるようにペットボトルを持ち上げた。
「飲まないか?」
「・・・・・飲む」
風呂の中で喘ぎ続けた太朗はきっと喉が渇いているだろうと、こうして水を持ってきたことは間違いが無かったようだ。
上杉はベッドに近付くと、ペットボトルを太朗には渡さずに直接自分が水を口に含み、そのまま太朗の顎を掴んで顔を仰向かせ
る。
何をしようとしているのか気付いたらしい太朗は少し視線を彷徨わせるものの、近づけた上杉の唇を素直に受け止めたので、上
杉はそのまま口移しで水を飲ませてやった。
「ん・・・・・っ」
水を飲ませるだけではつまらないと、口腔内に舌を潜入して中を味わえば、飲みきれない水が太朗の顎から滴り落ち、シーツ
を濡らして・・・・・。
クチュッと音をたてて唇を離すと、目元を染めた太朗が恨めしそうに上杉を睨んでくる。
「・・・・・水が温くなっちゃうじゃん・・・・・バカ」
「ははは、バカか」
「う、うわっ」
太朗らしい言葉に、上杉は破願してそのまま太朗を抱きしめた。
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