SUPER BOY











 カチャッと後ろで鍵の掛かる音がして、太朗はビクッと身体が飛び跳ねるように後ろを振り向いた。
 「ん?」
丁度鍵を掛け終わったらしい上杉は、太朗の視線に面白そうに笑って見せた。
(な、なんか・・・・・機嫌直った?)
 暑くてたまらなかった着ぐるみは車の中で脱いだ。
その間、マンションに戻ってくるまでの車の中でも微妙に機嫌が悪かったらしい上杉だが、マンションに近付くにつれてその気配
は何時ものものに戻っていった。
そして、地下駐車場から直通で部屋に行けるエレベーターに乗り込んだ頃から、もうすっかり何時もの上杉に戻っている。
(パーティー・・・・・なんかあったっけ?)
 仮装までして上機嫌に会場に行った上杉がどうして急に機嫌が悪くなったのか。
多分、太朗がスーツを汚してしまったあの男、『シロー』に関係があるのではというところまでは分かるのだが、どういった理由から
とまでは分からなかった。
 「・・・・・ジローさん?」
 「ん?腹減ったか?」
 「そ、そうじゃないけど!」
 「冷蔵庫に何か入ってると思うが・・・・・」
 何時ものテンションで話さない太朗が腹が空いている為だと思ったらしい上杉は、そのままキッチンへと足を向ける。
服は仮装のまま、さすがにマントは取っているが、その後ろ姿が何時もとは違うので太郎は気安く声が掛けられなかった。
(皆ジローさんに声掛けてたし・・・・・結構人気あるのかな)
あの場所にいたのは本当に10分か15分ほどの短い間だ。
しかし、上杉にはひきりなしに声が掛かっていたし、女達が向ける視線も熱かった。
(・・・・・ジローさんなんて、オジサンなのに)
30も半ばだといえば太朗からすれば立派な親父で、もしかすれば父親といってもいいくらいだ。
(こ、恋人だけどさ)
 上杉が人に好かれるカッコイイ男だというのは嬉しいが、女にモテルのははっきり言って面白くない。
そこまで考えて太朗はムッと頬を膨らませたが。
 「タロ、たこ焼きがあるぞ」
 「え?」
 「小田切が勝手に買って来て冷凍庫に入れてた。ああ、お前が好きそうなプリンやケーキもあるぞ」
 「それも小田切さんが用意してくれてたの?」
 「今日俺がお前をここに連れ込むことが予想出来てたんじゃないのか」
そう言って向けてきた上杉の視線は妙に色っぽい。
太朗は慌てて視線を逸らすと、一目散に冷蔵庫へと向かった。



 『・・・・・そういうことで、今夜は泊める』
 『なんだか賛成したくないんだけど・・・・・明日、あまり遅くならないうちに帰して下さい』
 『分かった』
 着替えるという口実で寝室に入った上杉は、そのまま携帯で太朗の家へと連絡した。
元々太朗を帰す気はなかった上杉の魂胆は分かっていたのか、佐緒里はそれほど文句は言ってこなかった。
(言われても帰さなかったがな)

 「あまり苛めないように」

別れ際、小田切にもそう言われたが関係ない。
これで時間を気にすることもなく太朗を構えると、上杉は笑いながらリビングに戻った。
丁度太朗は解凍したたこ焼きをリビングのガラスのテーブルの上に置き、自分はソファに座らないでソファにあったクッションをマット
代わりに尻の下に置いて、今まさに口にたこ焼きを放りこんだというところだった。
 「美味いか?」
 「うん!」
 今日の夕食はパーティーの後でどこかに連れて行こうと思っていたが、予定外に焦ってしまったのか早々にマンションに戻ってし
まい、育ち盛りの太朗としては空腹で仕方がなかっただろう。
 「タロ」
 「ふんぐ?」
 「悪かったな」
 「ひほーふぁん?」
太朗を喜ばせてやろうと思って連れて行ったパーティー。あそこで太朗は何の落ち度もなかった。
ただ、上杉が面白くなかったのだ。
(あいつ・・・・・久世は絶対にタロに近付くな)
面白いものを見付けたという視線で太朗を見ていた久世。
きっとあの男は太朗に接触してこようとするだろう。
 「ジローさん?」
 食べかけのたこ焼きをやっと飲み込んだ太朗は、下から上杉を見上げてくる。
小さな唇に青海苔やソースが付いているのに笑って、上杉は親指でグイッと乱暴に拭ってやった。
 「まだガキなんだがなあ」
 「・・・・・何だよ、それ。俺がジローさんよりガキなのは仕方ないだろっ」
 「もっとガキだったら良かったのにって思ってな」
 「何・・・・・うわあっ!」
 上杉はそのまま床に太朗を押し倒した。
下にはラグが敷いてあるので痛いはずは無いだろうが、不意うちを喰らったのでその表情は甘いというには程遠いものだった。
 「・・・・・何だよ」
女ならばこの後のことは当然想像が出来るだろうし、恋人関係である太朗ならば分かってくれてもいいはずだろう。
(ソースを口につけた子供に欲情するなんて・・・・・俺も変わったな)
 「んっ」
 尖らせていた太朗の唇にキスをした上杉は、そのまま太朗の口腔内に舌を差し込んだ。
甘いソースの味に笑いそうになるが、上杉はそのまま太朗のシャツを捲り上げ、小さいながらも敏感な乳首をキュッと抓った。
 「!」
ビクッと大きく身体をしならせた太朗の下半身が面白いように反応するのが、密着している上杉には直ぐ分かる。
若いからこそ堪え性がないのだろうが、女相手では恥ずかしいその感度の良さも、上杉にしてみれば敏感で淫らな可愛い身体
だ。
これから先も自分以外は触れないだろうこの身体を、更に自分好みに変えてやりたかった。
 「タロ」
 キスを解き、耳元で名前を呼ぶと、くすぐったいのか首を竦めた太朗が恨めしげな視線を向けてくる。
今度はチュッと軽く合わせるだけのキスをすると、太朗は目じりを赤く染めて視線を逸らした。
 「・・・・・するの?」
 「するぞ」
 「こ、ここで?」
 「ベットの方がいいか?」
 若い割には保守的な(単に慣れていないだけかもしれないが)太朗は、ベット以外での行為を嫌がる傾向があった。
まだ16歳の太朗に色々要求するのは酷かもしれないが、上杉としてはもっと太朗と楽しみたい。
もっともっと・・・・・太朗に乱れて欲しい。
 「タロ・・・・・」
 「・・・・・っ」
 「・・・・・タロ?」
 ギュッと上杉の腕を掴んできた太朗を、上杉は不思議そうに見下ろす。
すると、
 「・・・・・で、いい」
小さな、聞き取れないような言葉が太朗の口からもれた。
 「本当に?」
しかし、しっかりと太朗の言葉を聞き取った上杉は、嬉しそうに、しかし逃げ場を作ってやろうとからかう調子で、どんどん顔を赤
くしていく太朗の耳元で囁く。
 「明るいぞ?」
 「・・・・・いい」
続いて、間違いなくこう言った。

 「我慢出来ない・・・・・」

 上杉は笑った。
自分がこんなにも性急に太朗を欲しいと思ったように、太朗もどういった理由からかは分からないが自分を欲しがってくれている。
それがたまらなく嬉しかった。
 「タロ・・・・・」
 「ん・・・・・っ」
ジーパンのボタンを外し、チャックを下ろしてその隙間から手を差し入れる。
熱く濡れたまだ幼いペニスをグッと握り締めると、太朗は小さな声を上げてさらに強く上杉の背中にしがみ付いてきた。