TOKEN OF LOVE
10
『』の中は日本語です。
まだ口の中にはデザートの甘さが残っているというのに、この状況はどういうことなのだろうか。
アレッシオの唇を首筋に感じながら、友春は思わず上がりそうになる声を噛み殺した。
「トモ、声を我慢することはないぞ」
「で、でも・・・・・っ」
こんなふうに、いかにも今からセックスを始めますといった状況は何時まで経っても慣れることはない。これでも、アレッシオの胸を
押し返そうとしないだけましだといっても良かった。
(そ、それに、やっぱり恥ずかしいし・・・・・っ)
ここでセックスをしても、汚れたものを自分で始末することは出来ない。
当然のように旅館の仲居が片付けてくれるはずで、男同士なのにセックスをした形跡があることを知られてしまうのはさすがに抵
抗があった。
その上、もしかしたらその仲居がする仕事を有重がすることもあるかもしれないしと考えると、ますます身体が強張る。
そんな友春に気付いたアレッシオが顔を上げ、じっと友春を見つめてきた。
「トモ」
「・・・・・っ」
そんなふうに名前を呼ばないで欲しかった。既に快感を感じ始めている身体は、些細な刺激にも敏感に反応してしまう。
ピクッと友春の身体が震えたことに気付いたらしいアレッシオが目を細め、そのまま軽く唇にキスをしてきた。
チュッと音が鳴りそうな軽いそれに友春が戸惑っていると、いきなり下半身に刺激が与えられる。いまだアレッシオの手が自身の
ペニスの上に置かれていたことを今更ながら思い出した。
「ケ、ケイ、手が」
「ん?」
「あの、あのっ、ちょっと、離し、て」
「本当に離してもいいのか?」
もちろんと頷いた友春だったが、アレッシオは下着の上からスルスルとペニスを擦り続ける。
緩慢な刺激は羞恥よりも物足りなさを感じさせ、友春は無意識のうちに自分の両足を摺り寄せていた。
「んっ」
その拍子にアレッシオの手が下着の中へと侵入してくる。じかにペニスを握られた友春は、思わず甘い吐息を漏らしてしまった。
「ケ・・・・・イッ」
アレッシオの手を引き離そうと自分の手を持っていくが、さらにグニュリと揉みしだかれて反射的にアレッシオの手をペニスに押し当
てる。
意志とは全く違う身体の反応に、友春はギュッと目を閉じた。
友春の手が自分の手から離れない。
しかし、それが引き離そうとしているわけではないと分かり、アレッシオは頬を綻ばせながらゆっくりと手を動かし始めた。
「んぁっ、はっ」
クチュ チュク
友春のペニスからは既に先走りの液が滲み出ていて、アレッシオの手を濡らしてくる。アレッシオは先端部分を爪で引っ掻いた。
「あぁっ!」
その瞬間、アレッシオの手に熱い飛沫が掛かったのが分かる。あんな僅かな刺激でどうやら友春は精を吐き出してしまったらしい。
「ん・・・・・ふ・・・・・」
友春の下着の中は粘ついた液で濡れそぼっていたので、アレッシオは強引に下へと引き摺り下ろした。射精したばかりの弛緩
した身体では抵抗することも出来なかったらしく、簡単に友春はアレッシオの面前に下半身を晒すことになる。
「ケ、イ」
「トモ」
「あ、明かり、消して、ください」
「明かり?こんなに暗いのに?」
「だ、だって・・・・・っ」
友春が言っているのは枕元にある照明のことだろうが、これくらいの明るさでは友春の綺麗な身体がよく見えない。
(そうだ、見なくてどうする)
久し振りの友春の身体を堪能する時間が、あの露天風呂だけとはとても満足できなかった。
会わなかった間どんな風に友春が成長し、変化したのか、傍にいないからこそじっくりと見て把握したい。
「気付かせてくれたんだな」
「え?」
戸惑う友春を置いて、アレッシオは身体を起こすと部屋の明かりをつけた。
「・・・・・明るい中で見ると、なかなか艶かしい格好だったな」
「・・・・・?」
白いシーツに身を投げ出し、着ていた浴衣は大きく肌蹴られて下半身が露出している。白い太股は興奮でほの赤く染まり、たっ
た今精を吐き出したせいでペニスは白く汚れていて・・・・・。
「綺麗だ、トモ」
「・・・・・あっ・・・・・!」
その言葉にようやく自分の今の格好に気付いた友春が、慌ててアレッシオの目から隠すように身体を捻ろうとする。
もちろん、まだまだ鑑賞したいアレッシオはそれを許すつもりはなく、素早くベッドの上に戻ると友春の足の間に自分の身体を滑り
込ませた。
「ケイッ」
「もう何度もセックスしてきたのに、トモはまだ羞恥を感じるのか?」
「そ、そんなのっ、あ、当たり前・・・・・っ」
「鑑賞に堪えうる身体だぞ」
「そんなこと、言わないでください・・・・・」
始めは勢い良くアレッシオに意見を言ってきた友春だが、その間もアレッシオが腿や脇腹に手を滑らせて刺激していたので段々
と声が小さく、息が上がっている。
目もギュッと閉じていて現実から逃げたいと思っているのかもしれないが、そんな態度を取れば取るほど苛めたくなってしまう男心
は理解できないようだ。
「ほら、この可愛らしいペニスも、もっと見て欲しいと顔を見せている」
「・・・・・んやっ」
射精したばかりのペニスも再び勃ち上がってきていて、フルフルと震えているのが見える。その先端から少し滲み出ているものは
残っている精液なのだろうか。
(勿体無い)
アレッシオはそのまま頭を下げると、何の躊躇も無くペニスを咥えた。
ズチュ
「ひゃあっ?」
いきなり熱いものに包まれたペニス。
友春は腰を跳ねるように動かすと同時にパッと目を開いた。
「ケ、ケイッ?」
視界に入ってきたのは、自分の下半身に顔を埋めているアレッシオの黒髪。その下で何が行われているのかは、下半身に与え
られる強烈な刺激で直ぐに分かった。
「や、止めてっ」
射精したばかりのペニスは精液で汚れているのだ、それをそのままアレッシオに舐めさせるなんて恥ずかしくてたまらない。
いや、そもそもペニスを口で愛撫されること自体が恥ずかしくてたまらなくて、友春は何とかアレッシオの頭をそこから引き離そうと手
を伸ばした。
チュプ クチュ
「はっ、あっ!」
しかし、伸ばした手はそのままアレッシオの髪を握り締める。
先端から竿に掛け、唇だけでなく舌や口腔全てを使ってペニスを愛撫するアレッシオのテクニックに翻弄され、頭の中にあったはず
の羞恥がしだいに快感を追うだけに変化してきた。
(は、恥ずかしい、のに!)
もっと、強い刺激を与えて欲しい。
ペニスに集まっている熱を放出させて欲しい。
「ケ・・・・・イッ」
ジュプ ズリュ
アレッシオの口の中は自分のペニスが支配しているので返事が返ってくるはずがないのに、友春は何度も何度もその名前を口に
する。
すると、腿を持ち上げて押さえ込んでいたアレッシオの手が、髪を掴んでいた友春の手に触れてきた。
「!」
とっさにその手を掴むと、アレッシオもギュッと強く握り返してくれる。与えられる快感を耐えるたびに強くなってしまう手の力に何度
も宥めるように握り締められ、
「く・・・・・ぅ!」
友春はそのままアレッシオの口の中に精液を吐き出してしまった。
「・・・・・はっ、はっ・・・・・ふっ」
過ぎる快感に目元に涙を滲ませた友春は、ぼんやりと空を見つめていた。
今、自分が何をしてしまったのか・・・・・本当は分かっていたがちゃんと見ることが出来ない。
「・・・・・」
「・・・・・あ・・・・・」
やがて、友春の視界の中に顔を上げたアレッシオの姿が映った。
アレッシオも興奮したのか碧の瞳は情欲に濡れているのが分かる。そして・・・・・。
(く・・・・・ち)
閉じられたままのアレッシオの唇が白く汚れているのが見え、友春は眩暈がしそうだった。あれは明らかに今自分が吐き出してし
まったものだ。
「・・・・・っ」
どうしたらいいのだろうか。早くその唇を拭って欲しくて、いや、口の中にあるはずの精液も吐き出して欲しくてたまらないのに、友
春は声も無くアレッシオの顔を見つめることしか出来なかった。
口の中に吐き出された友春の精液を飲み込むと、シーツに身を沈めている紅潮した顔が泣きそうに歪んだ。
(気持ちが良かったはずだろうに)
もっともっと、自分に快感に乱れた顔を見せて欲しくて、アレッシオは唇についていたものもペロッと舌で舐め取った。
「トモ」
「・・・・・め、さい・・・・・」
「ん?」
「ごめん、な、さい・・・・・」
「謝ることなど何もしていないだろう?」
友春が射精してしまったのは、それだけアレッシオの愛撫に感じたからで、アレッシオとしても感じさせた喜びしか感じていない。
謝るくらいならばもっとと催促して欲しいくらいだと、アレッシオは友春の唇にキスをした。
チュク
そのまま舌を絡めると、始めは眉間に皺を寄せていた友春が躊躇いがちにだが自分からも舌を絡めてくる。
ピチャピチャとお互いの唾液を交換するように舌を濃厚に絡めながらアレッシオは友春の胸に指を滑らせ、立ち上がっている乳首
を摘み、捻ってやると、友春の口の中にあったアレッシオの舌が噛まれてしまった。
「・・・・・っ」
さすがに噛み切られるほどに強い力ではなかったが、それでもピリッとした痛みが走る。そして、次に口の中に感じたのは鉄の味
・・・・・自分の血の味だ。
「んむぅっ」
友春もその味を感じとったのかアレッシオの肩を激しく叩いてきたので、渋々だが唇を離してからかうように言った。
「私の舌を食べたかったのか?」
「ご、ごめんなさいっ」
「トモ」
「ぼ、僕・・・・・」
「私の手に感じただけのことだ」
「・・・・・」
それでも何度も小さな声で謝り続ける友春に、それならばとアレッシオは笑って提案する。
「では、傷付いた場所を舐めて癒してくれ」
「・・・・・え?」
「ほら」
アレッシオは舌を出した。どんな風になっているのかは自分で見ることが出来ないが、友春が顔を歪ませたので少しは痕になってい
るのかもしれない。
(むしろ、私にとってはトモが付けてくれた痕がずっと残る方が嬉しいがな)
「・・・・・」
「・・・・・」
しばらくそのままアレッシオの顔を見ていた友春が、やがて少し身を起こしてアレッシオに顔を近づけてきた。
「・・・・・」
その様子にアレッシオはさらに身を屈めてやる。やがて、ザラッとした感触と共に、友春が自分の舌を舐めるのが分かった。
舌を絡めるキスとはまた感触が違うそれ。友春はアレッシオの傷を癒すために懸命に舌を動かしているのだろうが、アレッシオにとっ
ては思い掛けない愛撫になっていた。
「・・・・・」
自身の下半身が既に鍛えるまでもなく勃ち上がってきたのが分かったアレッシオは、不意に顔を引いて友春の顔を見下ろした。
「ケ、イ?」
どうしたのかと、おずおずと訊ねてくる友春に、アレッシオはまだ緩めていなかった自分の浴衣の帯に手を掛けながら言う。
「トモが可愛くて、私のペニスが早く入りたいとねだってきた」
「そ・・・・・っ」
「心配しなくても、私を受け入れてくれるお前の可愛らしい場所は丹念に解すつもりだ」
「!」
痛みなど一瞬でも感じさせないよう、始めから愛らしく乱れさせるほどに。
アレッシオは浴衣を脱ぎ捨てる。現れた肉体に友春の顔だけでなく体までも赤くなったのに笑みを漏らしたアレッシオは、いきなり
友春の足首を掴んで大きく開くと、ペニスの下・・・・・そのもっと奥に舌を伸ばした。
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