以前もこんなことがあったような気がして、いずみはあの余り面白くない記憶を呼び起こした。
(あの時は専務の元カノを見て落ち込んで・・・・・俺って進歩ない)
 ただ、あの時よりも少しだけ変わったことがある。それは慧に対する自分の気持ちだ。
まだ慧に対する気持ちに確信がなかった時とは違い、今のいずみは間違いなく慧に好意を抱いている。
時間経過からすればそんなにも時間は経っていないはずなのだが、いずみは何時の間にか慧の情熱に巻き込まれように気持ちが急速に傾いた。
 「さっきの件だが・・・・・」
 「あのっ」
 自分1人が勝手に怒っていたので、慧に対する態度はほとんど八つ当たりだった。
とにかく早く謝りたくて、いずみはガバッと頭を下げた。
 「さっきはすみませんでした!」
 「いずみ」
 「俺、女の人と仲良く話する専務を見てムカムカして」
 「仲良くって、子供じゃないんだから・・・・・」
 「分かります。あれが仕事の一環なんだって分かってるつもりなんですけど・・・・・やっぱり女の人と一緒にいるのを見
ると、どうして俺をとか、ホントに俺でいいのかとか、グルグル考えて。それで、尾嶋さんが洸君を大切に扱っているのを
見て、すごく羨ましくなっちゃって・・・・・」
(それって、俺が専務を好きだからだよね)
 「専務のせいじゃないのに・・・・・ごめんなさい」
 「慧だろ?」
 「え?」
 「今はプライベートタイム。ほら、呼んで」
 「さ、慧さん?」
 「私も、すまなかった」
 慧はいずみを抱きしめた。
柔らかい女の身体ではないが、腕にちょうど良く収まるいずみを抱きしめると、慧自身ホッと安心出来た。
 「いずみの反応が可愛くて、ついからかいたくなるんだ」
 「か、可愛いって・・・・・」
 「確かに私は品行方正な生活を送ってきたわけじゃないから疑われるのも仕方ないが、いずみが秘書になってからの
私の生活は修行僧のように清いものだ。違う?」
 「いえ、そう、です」
確かにいずみが知る限りでは、慧の周りに女の影はなかった。
 ただ、いずみの気持ちとしては、たとえ今までの関係を清算する為とはいえ電話に出たりするのも嫌だったし、橘のよ
うに実際に会うのも嫌だった。
 「俺・・・・・我がままなのかも・・・・・」
 「いずみが?」
 「せ・・・・・慧さんを誰とも共有したくないって・・・・・思ってるみたいで・・・・・」
 「本当に?」
 「う・・・・・はい」
 「私もだ」
 「え?」
 「いずみを誰とも共有する気なんかない」
 そう言うと、慧はそっと唇を合わせてきた。
 「んん・・・・・っ」
 何度か交わしたことのある慧とのキスは深く甘く、初心者のいずみをいとも簡単に快感の渦に巻き込む。
ピチャピチャと生々しい音が聞こえるほど絡まる舌が痺れてきても、溢れる唾液が顎を伝っても、慧は飽きることなくキ
スを続けた。
(気持ちいい・・・・・)
 いずみの身体からすっかり力が抜けると、慧は軽々といずみの身体を抱き上げてベットルームに連れて行き、ベット
の上に優しく下ろした。
 「いずみ」
真上から真っ直ぐな視線を向けられ、いずみの頬はますます紅潮していく。
 「少し、腰を上げて」
 「・・・・・っ」
(どうしてそんなこと平然と言えるんだよ〜)
内心焦りまくっているいずみだったが身体は素直に慧の言う通りに動き、いずみは何時の間にか下半身下着姿になっ
ていた。
 「せ、せん・・・・・」
 「慧」
 「さ、慧さん、パーティーがまだ・・・・・」
 「義理は済んだ。ここからは2人の時間だ」
 慧はチュッと軽く唇にキスをすると、そのままいずみの下着の中に手を入れた。
 「!!」
 「いずみだって、期待してるな」
濡れてると笑いながら言われていずみは羞恥の為死にそうになるが、慧の大きな手でペニスをゆっくりと愛撫されると、
いずみの身体はたちまちその気持ちよさに蕩けていく。
 「も・・・・・と・・・・・」
 可愛い催促に異論はなく、慧はそのまま下着を下ろした。
まだ使い込まれていない、初々しいピンク色のペニスは既に喜びの涙を流し始めている。
 「可愛い」
同じ男の性器を目にしても、慧の欲望はいっこうに萎えることはなかった。
そのまま口で愛撫しようと、いずみの下半身に顔をうずめ掛けた時、

 「いずみ君、デザートが出てきたぞ」

 いきなり寝室のドアが開いて、俊栄が入ってきた。
今まさにといった2人は硬直したように動けなかったが、俊栄は孫が男とベットにいることを少しも驚く様子は無く、その
まま傍まで近付いてきて眉を顰めた。
 「なんだ、まだヤッとらんのか」
 「・・・・・じいさん」
思わず溜め息をついた慧は、チラッといずみに視線を向ける。
下半身が裸のままのいずみにシーツを掛けてやろうとした途端、

 
「うぎゃああああああああ!!」

けたたましいいずみの絶叫が部屋中に響いた。