9
「・・・・・くぅ・・・・・っ」
胸が詰まり、下半身の痛みと熱さがよりリアルに感覚に訴えてくる。
それでも、いずみの気持ちの中では《やっと》という思いが強かった。
慧の愛情を疑って、実際にセックスするという行為が怖くて、延ばしに延ばしていたこの行為。しかし、ここまできたらこ
んなものかと思えた。それは痛みが軽かったという意味ではなく、受け入れようと思えば出来るのだという、考え過ぎて
いた自分の気持ちへの思いだ。
「いずみ」
真上から自分を見下ろしてくる慧の表情は何時に無く真剣で、その額にもしがみついている腕にも汗が滲んでいる
のが分かった。この行為に対して必死なのは自分だけではないらしい。
「さ・・・・・と、しさ・・・・・」
「・・・・・っ」
名前を呼ぶと、自分の中に全て納まっている慧のペニスがピクッと震えたのが分かった。
(・・・・・可愛いって思っちゃったら・・・・・変、かな)
自分の身体を突き刺す慧のペニス自体はとても可愛いものというものではないが、持ち主の感情にここまでストレート
に反応する様は何だかとても可愛い気がした。
「い、です、よ」
「いずみ」
「動い、て」
色々な事を考えていたら、何だか身体の高ぶりが落ち着いてきたようだ。
そうなると、動かないままでいる慧のペニスが気になってしまって仕方が無い。このままでは慧も辛いだろうし、自分もモ
ヤモヤし続けると思ったいずみがそう言うと、
「!」
いきなり、慧のペニスがズッと先端近くまで引き抜かれ、
グチュッ グリュッ
まるで叩きつけられるように、再び根元までぺニスを挿入された。
「あっ、はっ、あっ!」
ペニスを動かすたびに、いずみの声が高くなる。
もちろん女の声と比べれば多少高くても男の声に間違いは無いのだが、その少し高めの男の喘ぎ声がこんなにも艶っ
ぽく聞こえるとは思わなかった。
「はっ、んっ」
時折、眉を顰め、掴んでいる慧の腕に爪をたてるのは、まだ痛みが消えていないのだろう。
「あっ、あっ」
それでも、いずみは止めてくれとは言わなかったし、慧も止めることなど出来なかった。
ようやく手に入れた愛しい相手の身体は想像以上に甘くて熱くて、幾多の女を抱いてきた慧にとっても、こんなに気持
ちの良い身体は初めて抱く気がする。
当然そこには愛があるが。
「・・・・・っ」
(くそ・・・・・っ、持たない、かっ)
本当はもっとじっくり、いずみが快感しか感じなくなるまで抱くつもりだったが、どうやら慧も絶頂が近くなってきた。
そしてそこでようやくあることに思い当たる。
「いずみ、悪い、中でいいかっ?」
尾嶋にも、そして他のゲイの友人にも、抱く時はセーフセックス・・・・・つまり、ゴムを使うのは当然の礼儀だと言われて
いたことだ。
これまで女を抱いてきた時には当然着けていたのだが、今日はいきなりの事であったし・・・・・いや、ゴムを着ける余裕
も無いほど性急にいずみを求めてしまったというのが本当のところだ。
男だから妊娠しないというのは安易な考えだが、慧はもっと別の意味でいずみの中に精を吐き出したいと思う。
(いずみの全てが俺のものだって・・・・・そう思いたいっ)
「ふっ・・・・・んっ」
慧の言葉の意味をちゃんと聞き取っているのかどうか、いずみはコクコクと必死な様子で頷いた。
抱いている最中のこんな確認は卑怯だとは思ったが、それでも慧はいずみの許可を貰ったのだと強引にこじつけて、
「ひっ、はっ、はっ!」
いずみの腰を抱え直し、激しく腰を打ちつけた慧は、
「・・・・・っつ」
「ひゃあぁっ!」
ペニスから熱く勢いのある精がいずみの最奥へと注ぎ込まれる。
「あ・・・・・ぁ・・・・・」
自分でも思いがけないほどの大量に吐き出される精液はなかなか止まらず、慧は全てを出し切るまでいずみの中から
ペニスを引き抜くことはしなかった。
「いっ、いいですっ!自分でしますから!」
ヘロヘロになって動かない身体を何とか動かそうとしたいずみだったが、
「無理だろ」
慧はその一言であっさりといずみの意見を退け、疲れきって動かないいずみの足を強引に開かせた。
「せ、専務!」
「慧」
「こ、こんなとこで、恥ずかしいですって!」
「恋人の身体の中に吐き出した自分のものを自分が綺麗にする。当然のことだ、慣れるんだな」
「・・・・・っ」
(本当に当然のことなのか〜?)
長かった(いずみにとっては)セックスの時間が終わり、疲れ切った身体をベッドの中で丸めていたいずみは、いきなり
慧に抱き上げられて目を丸くしてしまった。
自分もそうだが慧もまだ当然裸の状態で、隠す必要の無いペニスはいまだ硬度を保って上を向いている。それが濡れ
ているのが何のせいかは考えたくなかったが、慧はそのままいずみをバスルームへと連れて行った。
「な、何なんですか?」
「中で出したからな。綺麗にしておかないと」
「そっ!そんなのっ、自分でします!」
「自分で?自分の尻の穴に自分の指を入れるか?」
「・・・・・い、言い方考えてくださいよ〜」
「同じだ。俺が全部責任を取って綺麗にしてやるから」
確かに、いずみの身体を散々好きにしたのは慧で、いつの間にか中に精を吐き出されてしまった。今更それに文句を
言うつもりは無いが、熱に浮かされた時間ならまだしも、こんな明るい場所で正気に戻っている時、こんな風に足を開
いて局部を誰かに見せ付けるのは恥ずかしくてたまらない。
「せ、専務っ、あの!」
「慧」
「さ、慧さん、あの、本当にこんなこと、相手の人がするんですか?」
「ああ。お前を抱く為にいろいろ勉強したんだ。あ、もちろん実地はお前だけだからな」
楽しそうにそう言いながら、慧はソープで濡らした指をいずみの中に差し入れてきた。
ヌプッ
水音がバスルームに響いて、いずみは顔だけでなく全身を赤く染めてギュウッと目を閉じる。
その姿を、慧が楽しそうに・・・・・幸せそうに見つめていることには、いずみは気付くことが出来なかった。
![]()
![]()