TRAP
4
もう、数など数え切れないほど上杉には抱かれてきたが、どうしても初めはこんな風にふざけた感じで始まってしまう。
だが、それは上杉が不真面目だからというわけではなく、どうしてもセックスという行為を恥ずかしく思ってしまう自分の気持ちを解
かしてくれるからだということにも気が付いていた。
(・・・・・でも、半分は本当に面白がってる気がする)
パジャマの上着を完全に脱がされ、胸元に上杉のキスを受け入れながら、太朗はそんなことを考えていた。
「・・・・・んっ」
その時、チクッとした痛みが走る。
乳首に歯を当てられたのだと分かって、太朗は焦って上杉の肩を押しのけようとした。
「い、痛くしないでよっ」
「お前が違うことを考えているからだろう?」
「はあ?」
「こういう時は目の前の人間のことしか考えないものだぞ」
「・・・・・怒ってんの?」
まさかなと思いながら確認するようにとえば、当たり前だろうと言ってから口付けが落ちてくる。
余裕があるくせに、言葉では甘えてくる上杉にどう対すればいいのか迷うが、太朗はそのまま手を伸ばし、逞しい肩をぐっと抱き寄
せた。
「俺、ジローさんしか見てないじゃん」
「タロ」
耳元で、嬉しそうな声が聞こえる。
「だ、だからっ」
「だから?」
「・・・・・ちゃんと、しろ!」
これ以上、恥ずかしいことを言わせないで欲しい。
そう思いながら思い切って言った太朗の気持ちを悟ってくれたのか、上杉は笑いながらも分かったと返してくれた。
「あっ、あぅっ、は・・・・・っ」
パジャマを脱がせないまま手を差し入れ、下着の中に手を忍ばせてペニスを弄る。
既に緩く勃ち上がっていたそれを指先で擦り、先端部分を爪先で刺激すると、面白いほどにビクビクと太朗は身体をしならせた。
どんなふうに快感に追い込んで行こうかと思ったが、その心配はどうやら杞憂のようで、上杉の手はあっという間に粘ついた液で濡
れ、細い腰が我慢出来ないように揺れ始めた。
「タロ」
「んんぁっ」
手を動かすのは止めず、頬から首筋に唇を移した。
息を整えようとするのをわざと邪魔をし、快感をはぐらかすように不意に手を止めると、自分から腰を押しつけてくる。
「も、もうっ」
「いいぞ」
我慢なんて、させる気は無い。
太朗が望むだけ、そして、己も満足出来るほど、今夜はセックスをするつもりだ。
(俺を妬かせたお前が悪い)
けして太朗のせいではないと分かっていたが、告白をしてきたという女のことがどこかで気になっていたのかもしれない。
上杉は意地悪く、太朗のペニスから手を離して、わざとサワサワ下生えの毛をくすぐり、少し引っ張った。
「・・・・・っ」
先走りの液のせいで直ぐに指先に絡みついてくるが、元々体毛が薄い太朗だ、直ぐに肌に指先が触れた。
「んっ」
久し振りのせいか、太朗の身体はかなり飢えていたらしい。
もちろん、自慰はしていただろうが、かなり早い時期から自分という相手とセックスをしてきただけに、自慰では真の快感は得られな
いのだろう、太朗は呆気なく精を解き放った。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・」
急いたせいか、パクパクと口を開いて荒く息継ぎをする太朗をじっと見つめながら、上杉は口付けを繰り返す。
額に、頬に、鼻に。すると、太朗は興奮で赤くなった頬を緩めてくすぐったいと言ってきた。
「気持ち良かったか?」
「・・・・・そーいうの、聞く?」
「聞きたいな。お前を気持ち良くさせたいし」
反論する太朗に被せるように言えば、太朗はますます赤くなっていく。顔だけでなく、見下ろす身体まで赤く染まっていく様は見て
いて楽しくて、上杉はツンと立ち上がった乳首を指先でこねた。
「ちょ、ちょっと・・・・・っ」
「ここだけで、もう一度イくか?」
「そ、そんなのっ」
「ほら」
コリコリとした感触が指先に伝わってきて、上杉は空いている方の乳首を口に含む。
「!」
小さいものの、舌で絡め、歯で弄って・・・・・自身の身体の下でしなやかに跳ねる身体を堪能した。
続けざまにイかされた太朗は、ベッドに突っ伏した格好のまま唸った。
(く・・・・・そっ)
何だか負けた気分だ。
もちろん、セックスに勝負をかけるつもりは無かったが、それでも何時も上杉のペースで事を運ばれるのは・・・・・やはり悔しい。
チュッ
不意に、肩甲骨の下あたりに濡れた感触があった。
キスをされたと思った途端、太朗は顔の向きを変え、背中に覆いかぶさるようにしている上杉を睨んだ。
「ジローさん・・・・・」
「もうヘバったのか?」
「・・・・・」
まさか、本当にそうだと言うことは出来なくて、太朗は一度ギュッと目を閉じる。
その後、ムクッと身体を起こすと、
「・・・・・わっ」
突然、上杉を押し倒した。
「どうした?」
それなのに、余裕を持って自分を見上げてくる上杉の顔が憎らしく、太朗はそのまま噛みつくように上杉にキスをした。
逞しい胸元に唇を寄せ、筋肉に沿って舌を這わす。
乗り上げているので腿に男の下半身が触れていて、こんな拙い愛撫でも上杉が感じているというのは分かるのに、表情にはまだ余
裕が見えた。
まるで、太朗がこの先どんな行動を取るのか楽しんでいるようだ。
(何時までもそんな顔出来ないんだからなっ)
手を伸ばし、上杉の下半身を覆っていたバスタオルを取った。
「う・・・・・っ」
その明かりの下に見えたのは、既に支えるまでもなく勃ち上がっているペニス。先走りの液も零れ始めている。
(こ、こんなになってるのに・・・・・)
自分なら、もう欲望に負けそうになってしまうところだが、大人だから・・・・・いや、上杉だから、か?
クチュ
「・・・・・っ」
ずっしりと、重量のあるペニスを手にとり、そっと裏筋に指を這わすと、眼下の男らしい顔が僅かに顰められた。多少は感じているよ
うだ。
(もう少し、上?)
今度は、ゆっくりと先端に撫で上げ、傘の張った部分をクチッと握り締めた。
「ぅっ」
「・・・・・ジロー、さん」
「タロ・・・・・もっと、感じさせてくれ」
「う、うん」
何度も何度も手を動かし、先走りの液を竿に塗り付けるように指を動かした。
片手で回りきらないほど太いそれをまんべんなく愛撫することはとても無理で、太朗は上杉の腿に腰を落ち着けると、両手でペニ
スを握り締めた。
まるで新しいおもちゃで遊ぶように、もちろん、目の前にあるのは可愛らしいものではないが、太朗はなんとか上杉を感じさせるた
めに熱心に手を動かし続けた。
細く、自分よりも小さな指先が何度も自分のペニスを擦っている。
愛撫に夢中になっている太朗の表情はどこか艶っぽく、上杉の欲望はどんどん高まっていく。
「・・・・・くっ」
「も、もっと、強くした方が、いっ?」
「あ、あ」
多分、太朗は自分に余裕があると思っているだろうが、ここまでくると上杉も余裕がどうこう言っていられなかった。
腿に感じる太朗の尻の感触や、ペニスを弄る指の動きに、どんどん快感は高まってきた。だが、このまま太朗の手の中で射精する
のはもったいない。
「・・・・・っ」
「あ・・・・・っ?」
上杉は腹筋を使って上半身を起こした。
いきなりのことで驚いた太朗の唇を少し下から救うように奪うと、細い腰を両手で掴んで持ち上げる。
けして軽くは無い身体をそのままもう少し上まで運ぶと、
ズチュッ
「ひゃぁっ?!」
いきり立ったペニスの上にその身体を下した。
まだ解していなかった蕾は容易にペニスを受け入れてくれず、先端部分の途中で上杉の身体は進まなくなる。
痛みを感じるが、多分、いや、絶対に太朗の方が鋭い痛みを感じているはずだ。
「・・・・・ぅぁ・・・・・っ」
「タロ」
「あぁ・・・・・ぅ・・・・・」
「タロ・・・・・ッ」
お互いに欲しがっているからとはいえ、身体の準備が既に整えられているとは限らないというのは十分承知している。
男女のセックスの時でも相手の身体を気遣うものだが、男同士ならばなおさら、本当ならばペニスを受け入れることのない蕾を十
分解してやるのは当然なのだが・・・・・。
「タロ」
ただ、ここで謝罪の言葉を口にするのは違うと思った。太朗も、そんな言葉を聞きたいわけではないと思う。
「ん・・・・・ぁ・・・・・ぅっ」
熱が引き、冷たくなりかけた背中をゆっくり撫でてやると、ピクピクと腰が揺れた。ギチギチにペニスを銜えこんで離さない蕾が僅
かにだが緩み、その拍子に上杉は一気に先端部分を押し込む。
ズズッ
「あぁぁっ!」
高い声を上げた太朗の両腕が、首に回ってきた。
少し息苦しいくらいに締め付けられたが、先端部分が埋まったら後は楽だ。狭い内壁を掻きわけるようにゆっくりと腰を押し上げる
と、きつくて熱い襞がペニスに纏わりついてくる。
「ん・・・・・はっ」
「タロ・・・・・ッ」
お互いの腹の間で擦れた太朗のペニスから、勢いが鈍った精液が迸った。
入れただけで射精した太朗の感度の良さに笑みが零れるが、上杉もそんな太朗を笑って見ているだけの余裕は無かった。苦しく
て熱くて、早く太朗の中を滅茶苦茶に突き上げたくてたまらなかった。
「ジ、ロ・・・・・さっ」
「タロ」
「い、よっ」
こんな時でも太朗は男前だ。我慢するなと先を促す太朗に目を細め、上杉は軽く唇を合わせる。
途端に太朗の方から舌を絡めて来て、それに応えてやりながら、上杉はさらに腰を支えていた手をゆっくりと動かし、
「入った」
「う・・・・・んっ」
ようやく、ペニスをすべて埋め込み、下生えが太朗の滑らかな尻に触れた。
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