TRAP
5
自分の身体の中心で、熱い塊がドクドクと脈打っている。
息苦しいほど腹の中を圧迫するその存在感が、上杉が確かに自分の中にいるのだということを教えてくれた。
「ふ・・・・・ぁ・・・・・っ」
(ど、どこまで、とどくん、だよっ)
上杉の膝の上に乗っているので、身体の奥の奥にまでペニスが入りこむような気がする。
大きな男のモノが狭い中を強引に押しいってきているような、いや、太朗自身の身体がもっともっとと奥に誘いこんでいるような、何
だか不思議な感覚だ。
今だに、この感覚には慣れることが無い。だが、それでもこの不思議な感覚が自身の快感に結びつくのは確実で、太朗はほうっ
と大きく息をついてから少しだけ腰を浮かせた。上杉に完全に体重を乗せているのは申し訳ないと思ったからだ。
「・・・・・んっ」
(ま、だ・・・・・っ、きつ、かもっ)
ジンジンとした痺れにも似た感覚が腰を突きぬけてくる。
もう少し、中の存在に慣れるまで動かない方がいいだろうと思いながら揺らした視線の中に、悪戯っぽく笑う恋人の顔があった。
「!な、何だよっ」
身体を支配する僅かな痛みと大きな快感を制御することでいっぱいいっぱいだった自分の顔を見られていたのかと思うと、全身
が熱くなるほどに恥ずかしい。
「ん?可愛いなと思ってな」
「か、かわいっ?」
「ああ。俺のタロは、どんな時でも可愛いが、俺の腕の中にいる時が一番いい顔をしてる」
それがどういう意味かなど、考えなくてもにやけた上杉の表情で分かる。
文句を言おうとするものの、特別だという言葉の意味自体はとても嬉しいもので、太朗はう〜っと唸ってしまった。
グチッ
「うぅっ」
すると、どうやら身体に力が入ってしまったらしく、中のペニスを強く締め付ける。
「・・・・・っ」
少し目線が下の上杉の顔が快感に歪んだのが見えて、なんだか自分が一本彼からとったような気がした。
そう言えば、今日は自分の方が上杉を感じさせてやろうと決意していたはずだ。セックスに関しては何時も翻弄されてばかりの自
分が侮れないと思わせてやりたい・・・・・太朗はんっと唇を噛みしめながら腰を上げた。
(・・・・・ったく、これ以上俺を惚れさせてどうする)
上杉は自分の身体の上で淫らに腰を動かす恋人を目を細めて見つめた。
何時もはどちらかと言えば受け身な事の多い太朗が積極的に快楽を貪る姿は見ていて楽しいが、あまりに翻弄されると年上の
自分の面目が保てない。
「あっ、くぅっ、ふ・・・・・んっ」
大学生になって随分大人っぽくなり、初めて会った時の柔らかさから、大人との狭間のしなやかな身体に変化してきた身体。
もちろん女ではないが、上杉にとっては喉から手が出るほどに渇望している存在だ。
普段の眩しいほどに明るく元気な太朗ももちろん愛しいが、こんなふうに淫らに自分を誘うまでになった太朗も愛している。
どちらにせよ、この存在そのものに自分は惚れているんだとあっさり納得した上杉は、揺れている太朗の腰を掴んでグッと下から
突き上げた。
「あぁっ!」
「どうした?」
「き、きつ、いって・・・・・っ」
「でも、そのままじゃイけないだろ?」
僅かな刺激では物足りないんじゃないかとからかうと、太朗はキュウっと唇を噛みしめた。こんな時なのに悔しげな表情をするの
が面白い。
甘えるだけでなく、きちんとした自我があるのが好ましかった。
「い、ってろ!」
太朗は掴んでいた上杉の首から手を外すと、それを腹の上に移動して力を入れ、ズッと一気に腰を上げる。続いて、先程よりも
ゆっくりと腰を下して・・・・・それを、何度も太朗は繰り返した。
「・・・・・っ」
狭い内壁が強くペニスを締め付け、絶妙な扇動で刺激してくる。
上杉の腰にも甘い痺れが走って眉を顰めたが、この位置からでは結合部分が良く見えなかった。
「・・・・・タロに、もう少し頑張ってもらうか」
「・・・・・え?」
言うなり、再び上杉はベッドに仰臥する。中を突く角度が変わったのか、太朗の口から甘い悲鳴にも似た声が漏れた。
「ジ、ジロ、さっ」
「ほら、このままじゃ何時まで経ってもイけないぞ」
「・・・・・んぁっ」
「タ〜ロ」
「・・・・・そっ」
口では文句を言うくせに、太朗の内壁は更なる愛撫をねだるようにペニスに絡みついている。
「頑張れ」
からかうようにそう言えば、意地になったのか太朗が噛みつくようなキスをしてきた。
上杉の腰を跨いだ格好で、太朗は幾度も腰を上下させている。それを下から眺める自分の顔はきっとだらけきっているだろう。
「うぅんっ、んっ、んぅっ」
「・・・・・」
(エロイ眺め)
太朗の蕾からペニスがゆっくり出ていく。
ズチュッ
己の滾りきったペニスが、ヌラヌラと光りながら出入りをする。その滑りは、上杉の先走りの液のせいか、それとも太朗のペニスか
ら留めなく漏れているもののせいなのか。どちらにしても、初めよりも随分滑りが良くなり、水音と身体がぶつかる音が寝室に響い
ている。
その卑猥な光景に、上杉は舌舐めずりをした。
小さなあの蕾が、よく自分のペニスを飲み込むものだ。快感に蕩けた表情を強く表している太朗の顔をじっと見ながら、上杉はし
ばらく太朗のリードに身を任せる。
いや、何時まで抑制が効くのか、さすがに自信はなかった。
「ふぁっ、あっ、んんっ」
(お、れっ、すごく・・・・・っ)
エッチかもしれないと思うのに、どうしても腰が動くのを止められない。太朗は自分の身体の奥の奥まで擦り、突き上げていく上
杉のペニスに悶えながら一生懸命上杉をイかせようとした。
「んっ、あっ、あんっ」
「・・・・・っ」
下から自分の顔を見上げている上杉の額にはうっすらと汗が滲み、何時も以上にカッコ良い顔がさらに色気を含んだものになっ
ている。
だが、その瞳の奥に余裕のない欲情というのも感じ取れて、太朗は嬉しくなってしまった。
(夢中なの、俺だけじゃないんだ)
セックスという行為の熟練度ではもちろん足元にも及ばないが、お互いを欲するという対等な想いの中では自分も上杉も一緒
なのだ。こみ上げてくる快感以上に温かいものが心を支配し、太朗は思わず口をついて想いが溢れてしまった。
「す、きっ」
「・・・・・!」
「好き、だからっ!」
こんなことをさせるのも、するのも、相手が上杉だからだ。
その拍子に中のペニスを強く締め付けた太朗は、次の瞬間身体の中に感じた感覚に思わずえっと声を漏らした。
「ジ・・・・・ジロー、さん?」
(もしか、して・・・・・)
「んん・・・・・っ」
口を開く前に、太朗もブルッと身を震わせた途端に射精してしまう。
上杉の胸辺りまで白く汚してしまったことに焦りを感じるが、それ以上に自分の中を濡らすものに動揺していた。
何時も、太朗のことを翻弄するだけ翻弄した後上杉はイくのに、今回に限り少し早いような気がする。もしかしたら、太朗が思っ
ているよりもずっと、上杉も飢えていたというのだろうか。
「・・・・・」
「・・・・・」
その上で、熱い飛沫が最奥に掛かったかと思うと、一杯に中が満たされていく。少しも隙間もない結合部分から僅かに滲みで
てくるものに身を捩ろうとした太朗は、
「ぅわっ?」
いきなり、グルンと視界が変化した。
「・・・・・え?」
「やるじゃねえか、タロ」
「えぇ?」
何時の間にか、太朗の背中はベッドに押しつけられ、上杉が上から圧し掛かってきている。ただし、身体の最奥にあるペニスは
いまだ中に入ったままで、射精したというのにその大きさや硬さには変化がなかった。
「まさか、こんなに簡単にイかされるとは思ってもみなかった。情けないが、個人授業をしてきた身としては喜ぶもんかな」
「バ、バカッ!」
何の授業だと慌てて否定するものの、身体を襲う羞恥は隠しようもない。すると、その気持ちは身体にまで連動し、再び中に納
まったままのペニスを刺激し始めた。
「ちょっ、ま、ま、てっ!」
「待てない」
「ジローさんっ!」
少し息をつかせてほしいと訴えるが、上杉はまったく取り合ってくれずに太朗の両足を大きく割り開き、グッと腰を突き入れてくる。
「あぁっ!」
「今度は、俺がゆっくりと啼かせてやるからな」
「・・・・・っ」
ニッと目を細め、色気たっぷりに笑う上杉に、反対に太朗は真っ青になった。だが、上杉はそんな太朗の反応にますます楽しそうに
口元を緩める。
「頑張って付き合ってくれ」
「あぁっ!!」
待ってという言葉は、突き上げてくるペニスのせいで悲鳴に変わってしまった。
上杉をイかせることに成功したものの、太朗はその後延々、上杉の欲望に付き合わされる羽目になった。
「タロ」
「・・・・・」
くったりとシーツに沈み込んでしまった太朗は、名前を呼んでも返事をしてくれない。拗ねているのかと顔を覗きこむと、どうやら気
を失うようにして眠ってしまったようだ。
大人になって体力がついたかと思ったが、それとセックスに対する体力は少し違うらしい。
「仕方ない」
本当はこのまま風呂に入れてやる方がいいのだろうが、上杉も久々の情交でかなりサカってしまい、少々疲れてしまった。
それでも、体液や唾液で汚れてしまった身体を拭いてやるくらいはしてやらなければと、ベッドから降りた上杉は裸身のままバスル
ームへと向かった。
太朗が起きていれば、きっと下半身を隠せと怒鳴っただろう。その光景が鮮やかに思い浮かび、自然と頬には笑みが浮かんでし
まった。
「でもまあ、多少は大人になったか」
あれだけ積極的に動いてくれるのは嬉しい。恥ずかしがり、テレながら従う姿も可愛いが。
軽くシャワーを浴びた上杉は太朗のために熱い濡れタオルを用意しながら、ふと、日中のことを思い出した。
(あの女のこと、早急に調べないとな)
太朗に告白したという女の正体。太朗がトラブルを抱えているということは考えられず、100パーセント自分絡みに違いない。
今のところ大きな問題にはなりそうにないが、早めに手を打ってさっさと太朗の記憶の中からあの女のことを消し去ってしまいたかっ
た。
「・・・・・っと」
そこまで考えた上杉は、手にしたタオルを見下ろして直ぐに踵を返す。あのまま太朗が目覚めてしまうと、1人きりにされた不安を
感じてしまうかもしれないと思ったからだ。
「・・・・・」
寝室に戻っても、太朗は先程と同じ姿勢のまま眠っていた。
シーツに投げ出されたのびのびとした肢体をじっくりと観察しても文句を言われないのがいい。だが・・・・・。
「タ〜ロ」
どんなに文句を言われても、生き生きとした太朗の真っ直ぐな眼差しを見ていたい。
「おい、起きないと悪戯するぞ」
起こすのも可哀想だが1人でいるのも寂しくて、上杉は身体を拭いてやりながら太朗に小さな悪戯を続けていた。
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