指先の魔法










 どこかでヒューヒューと壊れたような笛の音が聞こえている。
ふわふわと揺れる感覚と、時折ズキンズキンとした熱さを感じる。
(お・・・・・れ・・・・・が・・・・・ゆれて・・・・・る?)
 再び意識が遠くなろうとした時、
 「あううう!!」
激しい衝撃を感じて、真琴は反射的に目を見開いた。
 「気がついたか」
 声は直ぐ傍から聞こえた。
ヒューヒューという音は、真琴の口から漏れる悲鳴のような呼吸の音だ。
真琴は詰まりながらも唾液を飲み込んで喉を濡らす。
涙でかすむ視界には、無表情の男達の姿が見えた。
 「な・・・・・にが・・・・・あっ!あうっ、い、痛!痛い!痛い!」
 身体に響く衝撃に、朦朧としていた真琴の意識は完全に覚醒してしまった。
あのまま意識を失くした方がどれだけ良かったかと思うぐらいのショックな現実を、真琴は自分の身体で思い知らされてい
た。
 体の中心、あり得ない場所に、今まで経験したことのない痛みを感じている。火傷しそうに熱い凶器が肛門を突き破り、
真琴の内臓を上に押し上げているのだ。
 「はっ、はっ、あう、あっ、ひい・・・・・!」
完全に裂けてしまったであろう肛門を、何の躊躇も容赦もなく擦りあげているもの・・・・・、ドクドクと波打つその凶器が一
体何なのか、ソファにうつ伏せに拘束されている真琴は想像もつかない。
ただ、このまま体の奥深いところまで侵食されてしまうと恐怖で一杯だ。
 尻にざらついた感触があると、凶器は内臓をザラッと擦りながら最奥まで侵し、次の瞬間また擦るようにして入口まで引
いていく。
しかし、真琴の体の中から出て行こうとはせず、まるで意思のない人形のように、真琴はその凶器の意思のまま身体を揺ら
された。
(痛い、痛いよ、やめて、痛い・・・・・)
 「っふぁっ、あっ!あっ!」
 止まらない涙と、鼻水と、閉じることの出来ない口の端から垂れる唾液で、真琴の顔はグチャグチャだ。
(・・・・・え・・・・・?)
 不意に、頬に何かが触れた。
真琴の目じりのホクロを確かめるように触れたのが誰かの指先だと分かり、真琴は軋む身体を少しだけよじり、大きな窓に
映る人影を見た。
ブラインドを下ろしていない窓には、二人の人物が映っている。ソファにうつ伏せになっている小柄な影と、その影の後ろに立
つ大きな影。
 「!!」
(う・・・・・そ・・・・・)
 二つの影は一点で繋がっていた。それはまるで・・・・・。
(じゃ、じゃあ、お腹の中、中の、これ・・・・・!)
 「やだ!いやだ!やめてよお!!」
それはまるでセックスだった。男と女の、当たり前のセックスしか常識にない真琴にとって、まるで女のように男のペニスを受
け入れている自分が信じられなかった。
 男は真琴がこの行為を認識したのが分かったのか、腰の動きを更に強く早くする。
 「はっ、はっ、やだっ、やだ・・・・・」
泣きながら、それでも真琴は窓に映る自分の姿から目を離せない。揺れる視線の先に、男のペニスに犯される自分がいる。
(どうして・・・・・?)
 なぜか、男が舌打ちをした。
そして次の瞬間、今までで一番体の奥深くにペニスが入り込んだかと思うと、
 「!」
 熱い飛沫が体の奥で広がるのが分かる。
それが男の精液だと、真琴は絶望と共に感じていた。